モンスターシューター第2回
尚哉は代表との会話を頭から消し、メンズのトートバッグを手にした。
このトートバッグには三センチ四方のマイクロビデオカメラが仕込んである。
百五十度広角フルハイビジョンと、十五メートル先まで撮影可能な夜間赤外線機能が搭載してあり、スマートフォンから操作できるようになっていた。
尚哉がパウダールームを出ると、バスローブ姿の千穂がベッドに座り電子タバコを吸っていた。
国民的女優のこの姿だけで、週刊誌とスポーツ紙のトップを飾るのは間違いない。
「お待たせしました」
尚哉は言いながら、千穂がシャワーを浴びている間にカメラテストをした場所......カウチソファにトートバッグを置いた。
「遅いよ。早くしてくれない? 寝るのが遅くなったら肌荒れするんだから」
千穂がいら立った声で言った。
ミディアムボブの黒髪、垂れ目女子という言葉を流行らせた大きな二重瞼の目、黒真珠を埋め込んだような瞳......千穂はテレビで見るイメージと違い横柄な性格をしていたが、圧倒的にかわいいルックスはドラマや映画の中の彼女以上だった。
「申し訳ありません」
尚哉は急いでベッドに向かった。
「失礼します」
尚哉はバスローブを脱ぎ、ベッドに上がった。
「なにこれ? もうギンギンになってるじゃん!」
千穂はテレビの番宣のときの清純な喋りかたとは打って変わり、ギャルっぽい口調で言いながら、尚哉の屹立したペニスを指差し下品に笑った。
「すみません......超有名な方なので、テンションが上がっちゃいまして」
尚哉は照れ笑いしながら、さりげなく左に移動した。
ビデオカメラに、千穂が映るアングルは頭に入っていた。
「たくさんの芸能人と、セックスしてきたんじゃないの?」
「はい。でも、千穂さんみたいな超有名人は初めてです」
「ねえねえ、どんな芸能人とヤッたの? 千穂が知ってる女優とかいる?」
千穂の黒目がちな瞳が、好奇に輝いた。
「すみません、お客様の情報は言えないんです」
「わかってるって。絶対に誰にも言わないからさ、私にだけ教えて」
千穂が執拗に食い下がってきた。
「本当にすみません。僕がここだけの話とお客様の名前を出したら、ほかのお客様の前でも千穂さんの名前を出す可能性があるということです」
尚哉は申し訳なさそうに言った。
千穂との行為の一部始終を盗撮している自分が、どの口で言っているのだろうか?
込み上げる罪悪感を、尚哉は打ち消した。
代表から命令されたのだ。
断れば仕事を失う......いや、それ以上の目にあわされるかもしれない。
代表は闇社会と繋がっている。
今回の盗撮も、反社の人間が絡んでいるのは間違いなかった。
「なんだ、つまんないな。もういい。クンニしてよ」
千穂は不貞腐れたように言うと電子タバコを消し、躊躇いなくバスローブを脱ぎ去りM字に両足を広げた。
尚哉は息を呑んだ。
陶器のように滑らかで白い肌、大き過ぎず小さ過ぎずの美乳、薄桃色の小さな乳輪、上向きな乳首......横柄な性格はイメージと真逆で性悪だが、彫刻のような肉体はイメージ通りに美しかった。
「ボーッとしてないで、早く舐めてよ」
「あ、はい」
尚哉はベッドに上がり、千穂の股間に顔を近づけた。
逸る気持ちを抑え、内腿のつけ根にそっと唇を押しつけながら臍の下に手を置いた。
子宮を軽く圧迫しながらクンニや指マンをすると、女性の感度は倍増するのだ。
まだ内腿しか愛撫していないというのに、千穂が甘い喘ぎ声を漏らし始めた。
尚哉は赤く膨張したクリトリスに顔を近づけ、舌先を高速に動かし舐め上げた。
「あっ、いい......」
千穂が美しい顔を歪ませ、快感に身をくねらせた。
赤い突起を吸い、舌で転がしながら、尚哉は千穂の美巨乳を揉みしだいた。
柔らかでありながら弾力のある感触は、千穂の美巨乳が天然であることを証明していた。
「乳首も吸って......」
千穂が喘ぎながら言った。
ベッドに押しつけられている尚哉のペニスは、痛いほどに怒張していた。
これは、現実なのか......。
いまさらながら、尚哉は自問した。
世の男達のほとんどが、一度でいいから抱いてみたいと夢見る国民的女優が、興奮に身悶えつつ乳首を吸ってほしいと尚哉に要求しているのだ。
尚哉は枕元に移動し、千穂の美巨乳を揉み上げながら右の乳首を含んだ――硬く突起した乳首を吸っては転がすことを繰り返した。
「あふぅん......」
千穂がせつなげな声を漏らした。
尚哉は右手を下腹部に滑らせ、人差し指と中指を陰部に挿入した。
既にびしょびしょになっている愛液がローション代わりになり、尚哉の指は潤う肉壺にするりと侵入した。
尚哉は恥骨の裏で二本の指を折り曲げ、Gスポットのざらついた肉壁を指の腹で優しく擦った。
「ああっ、そこヤバイ......」
千穂が腰を浮かし、激しくよがり始めた。
「ヤバイなら、やめましょうか?」
尚哉は千穂の耳元で囁き、Gスポットを強く押し上げるように刺激した。
「いや......やめないで......」
千穂がハの字に眉を下げ、潤む瞳で懇願してきた。
千穂はМ......尚哉の読みは当たった。
彼女がSならば、さっきまでと同じ口調で、ふざけんな、の言葉が返ってきたはずだ。
Sの顧客にはMに、Mの顧客にはSになって奉仕するのが、プロの仕事だ。
「ほら、チャプチャプと卑猥な音を立ててますよ。ドラマや映画ではあんなに清楚なのに、いけないおまんこですね」
尚哉は言葉責めをしながら、指ピストンを開始した。
「あっ、ヤバイ......ヤバイ!」
愛液が音量を増すのと比例するように、千穂の喘ぎ声も大きくなった。
「なにがヤバイんですか? もしかして、お漏らしするんじゃないでしょうね?」
尚哉は言葉責めを続けながら、指ピストンの速度を増した。
「あん......ヤバイ! 漏れちゃう! 漏れちゃう! ああ......ああっ......ああーっ!」
腰を浮かした千穂の陰部から噴き出した大量の液体が放物線を描いた。
「あ~あ~あ~、ダメじゃないですか~、朝ドラのヒロインがこんなに潮を噴いちゃったら~。ほら、見てくださいよ、僕の手がびしょびしょになったじゃないですか」
尚哉は、千穂の愛液に塗れた右手を宙に掲げながらサディスティックに言った。
「いや......」
両手で顔を覆い、千穂がはにかんだ。
Synopsisあらすじ
ポニーテールにした髪、ハーフに間違われる彫りの深い顔立ち、カラーコンタクトで彩られたグレーの瞳、筋肉の鎧に覆われた褐色の肌――一日数時間のトレーニングを日課にする冴木徹は、潰れたジムを居抜きで借り、トラブルシューティングの事務所を構えている。その名は「MST」。モンスターシューターの略だ。
Profile著者紹介
大阪生まれ。金融会社勤務、コンサルタント業を経て、1998年「血塗られた神話」で第7回メフィスト賞を受賞し作家デビュー。以後エンターテインメント小説を縦横に執筆する。著書に『#刑事の娘は何してる?』『血』『少年は死になさい…美しく』『ホームズ四世』『無間地獄』『忘れ雪』『紙のピアノ』『枕女王』『動物警察24時』『虹の橋からきた犬』など多数。映像化された作品も多い。
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