
必殺シリーズ
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誉田
これ言っちゃおうか、言っちゃうまいかってずっと迷ってたんですが......。『歌舞伎町セブン』は、途中まで読んだ読者が、いつ仕掛けに気づくかという小説なんですよね。「これ、『必殺』じゃん!」と。
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今野
いや、でも、『必殺シリーズ』はパターン変えていろいろあるけど、そうとわかっても面白いよね。俺も『必殺』好きなんだよね。
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誉田
いいですよねえ。高校の頃、夕方に再放送ずっとやってたんですよ。シリーズごとの前口上をそらんじて言えましたからね。
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今野
いろんなシリーズあるじゃないですか。「昨日勤皇、今日佐幕」という口上のやつ(第9作『必殺からくり人 血風編』)もあった。
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誉田
はい。僕は、リアルタイムでは(第15作の)『必殺仕事人』世代になっちゃいますけど、再放送なんか見るとやっぱり、山崎努さんが「念仏の鉄」をやった(第2作の)『必殺仕置人』が一番ドロッとしてて好きですね。
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今野
俺は高校生の時に、池波正太郎の『仕掛人・藤枝梅安』シリーズを原作とした(第1作の)『必殺仕掛人』を観てたのよ。主演が緒形拳さんでね。あれは刺激的だったなあ。
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誉田
僕が持ってる『藤枝梅安』シリーズの文庫は、緒形拳さんのバリエーションの表紙ですよ。実は『歌舞伎町セブン』は『梅安』へのオマージュでもあるんです。わかる人にはわかってもらえると思います。
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今野
俺の場合、警察官を書くというのは何かって自分でずっと考えてみたら、お侍さんが書きたいんだと思ったんですよ。つまり、武力を持った公務員ですよね。だから、長いあいだ警察小説が日本で根づかなかったのは、多分、捕物帳があったからだと思うんです。
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誉田
ああ、それで足りちゃってた。
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今野
エド・マクベインの『87分署』シリーズと池波さんの『鬼平犯科帳』って、ほとんど似たような構造なんです。『鬼平』があればね、みんな満足してたんですよ、きっと。
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誉田
ああ、なるほど。