［あらすじ］
　描かれた物が実体化し、軍隊も洪水も引き出せる魔法の絵画は、天才少年トルフカが描いたものだった。惨劇を生み出す絵画を、そうとも知らず依頼のままに描いていたことを悔いていたトルフカは、女剣士サリとともに絵画回収の旅へ出る。絵画が軍事利用されているとおぼしき内戦状態のギスト王国では、反乱軍を率いるセリアに出会い、絵画を大量に持つ国王との戦いに協力するよう持ちかけられるが……。

［選評］
　オリジナリティある設定とダイナミックなシーン構成を両立させ、世界観に入り込ませる力は群を抜いていた。また、贖罪の旅を続ける少年と女剣士から、敵となる王と魔女に至るキャラクター全体にも目配りが効いている。いっぽう、視点の切り替え等、構成力に弱さも感じられ、特別賞にとどまった。

［受賞コメント］
　アパートで受賞の電話を夢見心地のような気分で聞いた後、布団に突っ伏して「やった！」と何度も叫んでいました。下の住人はうるさかったと思います。申し訳ない。
　前に進みたい、と思いながら作った作品が賞をいただき、本当に嬉しく、光栄です。
　プロットを見てくれた学校の先生方や友人たち、迷惑ばかりかけた両親、この作品を選んでくださった選考者の方々に、最高の感謝を。
　これから作品を読んでくれる読者の皆様が、少しでも楽しんでいただけるように、精進したいと思います。

■及川早月 『よすが横丁修理店　―迷子の持ち主、お探しします―』

［あらすじ］
　人に大切にされた道具には心が宿り、人との縁が切れると道具は迷子になる。〝ぼく〟の祖父は持ち主を失った古道具を集めて、よすが横丁に修理店「ゆかりや」をつくった。入院中の祖父に代わり店長代理をつとめるエンさんとともに、ぼくはさまざまな道具と出会い、人とつながる縁の紐を結んだり、断ち切ったりしていく。しかし、そんなある日、ぼくの体にある異変が起こり始める――。

［選評］
　可愛らしいキャラクター造形と、心温まるストーリー展開が読み手を強く惹きつけた。しかしながら物語の構成の練り込みが少々甘く、内容もC★NOVELSに適しているのかという疑問も感じられたため、奨励賞受賞となった。

■くれや一空 『黄金の蛇と古の兄弟』

［あらすじ］
　ごく普通の女子高生・鎌足悠斗はある日突然、鎌足宗家の宗主に指名された。半ば強引に宗家の邸に連れて行かれた彼女は、騙されて代々宗主に受け継がれる宝珠を体内に取り込んでしまう。宗主の証である金色の蛇が体内から発現し、直後、謎の武装集団の襲撃が！その危機を救ったのは、珍妙な風体の三兄弟だった！？　悠斗は彼らと共に、武装集団の本拠地である巨大ビルに殴り込む――。
　
［選評］
　ストーリーの圧倒的なスピード感、激しいアクションや敵の造形にみえるエンターテインメント性が高く評価された。そのいっぽう登場人物が多すぎるなど、読み手に与える情報を整理しきれていない点から、奨励賞受賞となった。