あらすじ

『かたちだけの愛』平野啓一郎

書籍
定価:本体1,700円(税別)

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プロダクトデザイナーの相良郁哉(あいらいくや)は、ある雨の夜、自動車事故の現場に遭遇し、左足切断という大怪我を負った美貌の女優・叶世久美子(かなせくみこ)を助ける。 その後、彼女の義足をデザインすることになり、二人はしだいに心を通わせるが、久美子には事故現場から逃げた愛人の影が付きまとい、相良を悩ませる。 一方、生きる希望を失っていた久美子は、相良やマネジャーの支えで、義足でパリコレの舞台に立つという目標を得て、少しずつ立ち直っていくが・・・・・・。
二人は、それぞれの人生の中で見失っていた「愛」を取り戻せるのか?

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「愛」に関する名言が満載!編集者オススメ

愛する人が、その昔つきあっていた相手は、魅力的であった方がいいのか、それとも、魅力的でない方がいいのか?・・・・・・(161ページ)

先に愛し始めた人間にとって、恋愛は常に、神秘的な人事問題である。それは、たった一つしかないポストを前にして、ライヴァルに出し抜かれ、理不尽な評価に愕然とする勤め人の懊悩と、恐らくは相通じるものである。(162ページ)

恋が花であり、愛が果実だとするならば、セックスは、花を落として、実を結ぶための、季節の変わり目のようなものである。(234ページ)

男女間のみならず、母と子、父と子の関係など、思わず傍線をひきたくなるような「愛」についてのヒントが詰まっています。
平野さんならではの美しく切ないラブシーンにも注目です!

ディティールにも注目!編集者オススメ

Design
Design
プロダクトデザイナーと女優のラブストーリーだけあって、小説中には、たくさんのデザイナー家具やおしゃれアイテムが登場。 相良が事務所で使っているデスク・ランプ「トロメオ」、久美子のグラビア撮影に使われる倉俣史朗デザインの椅子「ミス・ブランチ」、そして、相良が久美子に贈るトッズのバレエシューズ・・・・・・。 どれも、知る人ぞ知る名品です。
Design
Design
かと思えば、相良がデザインした数々の製品は、どれも平野さんの想像の賜物。 音楽を良い音で聴くための脱着式の大きな耳殻型ヘッドホン「ミューミ」、1日24時間が減っていく壁掛け時計、半袖シャツ専用の便利なハンガー・・・・・・。 実際に製品化されたら、売れそうです。
Music
Music
二人が一緒に聴くのは、ラヴェルの《ピアノ協奏曲》第二楽章。
相良いわく「色々あったけど、最後はでも、良かったねっていうような映画のエンドロールに流れる曲のイメージ。 黒地に白い文字で書かれた監督名などが上がっていくのを眺めながら、印象的なシーンが頭の中を過っていくような・・・・・・」。 まさに、この作品のテーマ曲ともいえる存在です。 ラヴェルといえば《ボレロ》しか知らない方も多いと思いますが、是非、チェックしてみて。
Food
Food
Aoビルのレストラン〈トゥルームス〉でのディナーや〈ピエール・エルメ〉のマカロン・・・・・・。 これらおしゃれ系の食べ物にまざって登場するのが、相良手作りのリーペリン・ソースを効かせたチーズトースト、そして牛乳寒天! 相良の人となりが垣間見える描写です。
Book
相良の義足デザインにヒントを投げかけるのは、谷崎潤一郎《陰翳礼讃》。 また平野さん自身、本作を執筆する際には谷崎の《痴人の愛》《蓼喰う虫》を意識したとか。 平野作品ならではの文学論も見逃せません。

などなど、頁をめくる手を止められないミステリアスなストーリー展開の裏に、作家・平野啓一郎のさまざまなたくらみが施された『かたちだけの愛』。 読むほどに味わい深い、感動の長篇を、ぜひお楽しみください。