


男女間のみならず、母と子、父と子の関係など、思わず傍線をひきたくなるような「愛」についてのヒントが詰まっています。
平野さんならではの美しく切ないラブシーンにも注目です!


- プロダクトデザイナーと女優のラブストーリーだけあって、小説中には、たくさんのデザイナー家具やおしゃれアイテムが登場。 相良が事務所で使っているデスク・ランプ「トロメオ」、久美子のグラビア撮影に使われる倉俣史朗デザインの椅子「ミス・ブランチ」、そして、相良が久美子に贈るトッズのバレエシューズ・・・・・・。 どれも、知る人ぞ知る名品です。


- かと思えば、相良がデザインした数々の製品は、どれも平野さんの想像の賜物。 音楽を良い音で聴くための脱着式の大きな耳殻型ヘッドホン「ミューミ」、1日24時間が減っていく壁掛け時計、半袖シャツ専用の便利なハンガー・・・・・・。 実際に製品化されたら、売れそうです。


- 二人が一緒に聴くのは、ラヴェルの《ピアノ協奏曲》第二楽章。
相良いわく「色々あったけど、最後はでも、良かったねっていうような映画のエンドロールに流れる曲のイメージ。 黒地に白い文字で書かれた監督名などが上がっていくのを眺めながら、印象的なシーンが頭の中を過っていくような・・・・・・」。 まさに、この作品のテーマ曲ともいえる存在です。 ラヴェルといえば《ボレロ》しか知らない方も多いと思いますが、是非、チェックしてみて。


- Aoビルのレストラン〈トゥルームス〉でのディナーや〈ピエール・エルメ〉のマカロン・・・・・・。 これらおしゃれ系の食べ物にまざって登場するのが、相良手作りのリーペリン・ソースを効かせたチーズトースト、そして牛乳寒天! 相良の人となりが垣間見える描写です。

- 相良の義足デザインにヒントを投げかけるのは、谷崎潤一郎《陰翳礼讃》。 また平野さん自身、本作を執筆する際には谷崎の《痴人の愛》《蓼喰う虫》を意識したとか。 平野作品ならではの文学論も見逃せません。
などなど、頁をめくる手を止められないミステリアスなストーリー展開の裏に、作家・平野啓一郎のさまざまなたくらみが施された『かたちだけの愛』。 読むほどに味わい深い、感動の長篇を、ぜひお楽しみください。






