宮城谷昌光
中国史といえば「三国志」。それ以外の時代は何となく断片的にしか......という方も多いのではないのでしょうか。本書の主人公、劉秀は、その 三国志の時代か ら遡ること約二百年、新の時代に生まれ、時の君主、王莽に叛旗を翻して、後漢を打ち立てることになります。富も、きわだった家名ももたず、た だ農業にのみ 長けていたごく平凡な一人の少年が、どうして郡雄並び立つ乱世にひとり、突出することが出来たのか。また、天下を取った後も、その磁力に引き 寄せられるよ うにあらゆる名将、知将が彼の元に集まってきたのか。
「歴史小説は美しくなくてはならない」という著者。本作は後漢成立を歴史的になぞるだけでなく、一見平凡な人の中に隠れていた美質が、光を当てられ輝き出す瞬間を丁寧に描いた文学作品としてもお読み頂けるのではないかと思います。