書籍情報

書籍詳細

サイパン邀撃戦 中

C★NOVELS

覇者の戦塵1944

サイパン邀撃戦 中

谷甲州 著

帝国軍第一艦隊は最新型禰式翔竜で米高速戦艦部隊を撃破した。一方、米太平洋前進基地メジュロ環礁を索敵中の翔竜搭載型伊五四潜が、鈍足の大船団を発見。単艦追尾にかかるが......!?

カバー:佐藤道明
刊行日:2013/9/25
新書判/216ページ/定価:本体900円(税別)
ISBN978-4-12-501237-7 C0293

はしゃのせんじん1944
さいぱんようげきせん ちゅう



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コメント

 映画『座頭市』の設定は秀逸だ、と思う。
 通算で37冊めになる『覇者の戦塵』を書きながら、そのことを痛感した。主人公の座頭市は視覚に頼ることなく仕込み杖をふるい、敵対する渡世人や剣豪を斬り伏せていく。音と匂いだけが頼りのはずだが、観客はその光景をスクリーン上の映像として「みて」いる。決して座頭市の*視点(傍点)で、チャンバラを追体験しているわけではない。その場にいない第三者の眼を通して、主人公の活躍を目撃しているのだ。
 よく考えると、これは奇妙な話だ。小説なら読者は主人公や語り手の視点で、物語を追うのが定石だ。主人公の視覚が失われていれば、読者も物語の世界を「みる」ことができない。文字どおり音と匂いのみの世界だが、小説でこのような世界を描くのは非常に困難だといえる。実際に書かれていたら、シュールな実験小説になるかもしれない。もしも映画で忠実に再現しようとすれば、ユニバーサルスタジオあたりのアトラクションにならざるをえない。観客は眼隠しをして体感型シートに座り、前後左右をいそがしく移動する敵の足音や体臭を感じとることになる。
 それに近い体感型のアトラクションは存在するし、ステレオ音源を利用した立体的な放送劇を聞いたこともある。だが趣向としては面白いが、2時間ちかい映画をまるまる視覚抜きで描くのは困難だろう。だから映画『座頭市』は秀逸なのだ。眼がみえない座頭市の活躍を、観客は視覚を通して楽しむことができる。
 何故こんなことを書くかというと、本書の主要な舞台が潜水艦だったからだ。潜水艦には窓がなく、潜望鏡を使えるのはごくかぎられた乗員だけだ。潜航中は音だけが頼りだが、やはり普通の乗員は音響機器に触れることもできない。したがって潜水艦乗員の視点で海中の戦闘を描くのは、非常にしんどいのである。座頭市にならって、映画なみの視点移動を導入するのは反則なのだ。道理で原稿の仕上がりが遅いはずだ。
 なんだ。結局は言い訳になってしまったか。
 

〔谷甲州/2013年9月〕

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