完璧な女体を市販の材料で手作りするという、驚くべき作業の製作工程に着目して描きました。
飽くなき探究心と、尋常ならざるアナログ的手法、そして縦横無尽に日本中を駆け巡人公の行動力がこの「青塚氏の話」の一番の魅力です。
3Dプリンターに湧くようなぬるいデジタル思考を木っ端みじんに粉砕する、ダッチワイフ文学の最高峰。
現実と虚構の狭間で揺れ動く、男たちの繊細な愛についての物語でもありますが、そのへんは全てカットしました。
えのもとしゅんじ
1968年、神奈川県生まれ。『モーニング』より「GOLDEN LUCKY」でデビュー。不条理さと哲学的な問いが横溢する独特のギャグ世界を構築。主な著書に『えの素』『榎本俊二のカリスマ育児』『ムーたち』などがある。
原作の「青塚氏の話」は『潤一郎ラビリンスⅩⅠ――銀幕の彼方』に収録されています。
また、過剰なまでの献身と純愛の極地を描いた谷崎潤一郎の作品は下記の書籍でお楽しみいただけます。