大変遅くなりまして申し訳ございませんでした。描く前に近藤聡乃さんに会ったので漫画を描く時に大切な事は何ですかと訊いた所、締切りを守る事ですとお教へ下さいました。肝に銘じたつもりでしたが彫が浅かった様です。
原文を漫画用に脚色するコツみた様な物がどうにも掴めませんで、ネイムを仕上げるのに異様に時間が掛かってしまいました。原作の良さを損なわぬようになどと云うおこがましい考えを捨てて、改竄止むなしと開き直りましたら削ったり変えたりが妙に快感になって参りましてようやっと進みました。
それでも語りの面白さが原作の良さだと思いましたので漫画と云って良いのか分からぬ文字の多い仕上がりとなりました。また登場する女中さん毎に話の趣が変わりこれまでの谷崎作品のエッセンスが垣間見える所など、少しでも表せているか心配です。
御一読下さり其の上お楽しみ戴けましたら何よりに存じます。どうぞ御覧下さい。
山口晃(やまぐちあきら)
1969年群東京都生まれ。群馬県桐生市育ち。画家。2007年、会田誠との二人展「アートで候。会田誠、山口晃展」、08年「さて、大山崎 山口晃展」を催して以降、各地で展覧会が開かれている。寺院や公共施設等のパブリックアートを手がける一方、新聞小説や書籍の装画、文筆業など活躍は多岐に渡る。主な著書にマンガ『すずしろ日記』シリーズ、『藤森照信×山口晃 日本建築集中講義』のほか、12年に上梓した『ヘンな美術史』で小林秀雄賞を受賞。