机の中にしまいっぱなしだった文学全集を取り出して、初めて読んだ谷崎作品が「痴人の愛」でした。当時十代半ば。フェティシズムよりも、ナオミが少女から女になるときの身体の変化のみずみずしさや高慢が、これから自分に起こる予感となって流れ込んできたのを思い出します。いまや譲治サイドの大人となってしまいましたが、あのときのぐんぐんと身体が拡張していく気分をアイドル・なおみんの目を通して描いてみました。
今日マチ子(きょう・まちこ)
東京都生まれ。2005年「ほぼ日マンガ大賞」入賞。14年に『みつあみの神様』『アノネ、』『mina-mo-no-gram』『U』で手塚治虫文化賞新生賞」受賞。15年に『いちご戦争』で日本漫画家協会賞・カーツーン部門大賞」受賞。近著に『ニンフ』『ぱらいそ』などがある。
原作の「痴人の愛」や、官能的な愛やマゾヒズムを描いた谷崎潤一郎の作品は下記の書籍でお楽しみいただけます。
また、山田詠美さんが『痴人の愛』をオマージュした小説『賢者の愛』も好評発売中。