思いきり耽美なものを描こうかと思っていたのですが、「蘿洞先生」「続蘿洞先生」を読んだらすっかり気に入ってしまいました。食えない蘿洞先生はもちろん、飄々とした記者もとても好きです。美しいけれど美しいだけに終始しない、立ちのぼってくる情景が生き生きと蠢いている、そんな印象の谷崎先生の世界でした。
中村明日美子(なかむら・あすみこ)
2000年に「コーヒー砂糖いり恋する窓辺」でデビュー。爽やかな青春物語からボーイズラブ、官能的な物語まで、多岐にわたる世界観で読者を魅了する。近著に『同級生』シリーズ、『君曜日』など。
原作の「蘿洞先生」「続蘿洞先生」は『潤一郎ラビリンスⅡ ――マゾヒズム小説集』に収録されています。
その他、官能的な愛やマゾヒズムを描いた谷崎潤一郎の作品は下記の書籍でお楽しみいただけます。