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大統領奪還指令3

C★NOVELS

大統領奪還指令3
手負いの水機団

大石英司 著

各国がアメリカを去るなか、支援を続ける自衛隊水機団は十名もの戦死者を出した。一方、洋上では、混乱に乗じた中国の不穏な動きが。

カバー:安田忠幸
新書判/224ページ/定価:1265円(10%税込)
ISBN978-412-501492-0


だいとうりょうだっかんしれい3
ておいのすいきだん


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コメント

 第二次世界大戦は、なぜ連合国が勝利し、われわれ枢軸側は敗北したのか? 冷戦時代を通じて、教育現場ではこう教えられて来た。それは、全体主義国家に対する民主主義の戦いであったからだと。結局は、より文明的な政治体制を掲げる側が勝利したのだと。
 大嘘です! これは、過酷な冷戦を戦い抜くための方便に過ぎなかった。
 では事実は何か? 連合国を勝たせたものは何か? それは「後背地」の存在である。アメリカという、超巨大な後背地が存在したからです。「後背地」なる言葉、実は戦略や戦争だけで使われる言葉ではありません。それは、文化人類学、地理学、経済学ですら使われる言葉、概念です。
 ロシアは、ウラル山脈の東に、シベリアという広大な後背地を持っていた。フランスにはイギリスという後背地が、そのイギリスには、これまたアメリカという底なし沼のような後背地が拡がっていた。ドイツは、万一イギリスを陥落させることは出来ても、アメリカを攻めることはできなかった。
 対して、枢軸側に後背地は無かった。日本、ドイツ、イタリア、いずれも周辺に植民地は持っていても、それらのほとんどは海で隔てられていた。
 そして日本は、中国大陸で、中国というこれまた壮大な後背地を要する国を侵略して痛い目に遭った。南京を陥落させたところで、陸軍には、重慶まで攻め入るような戦力や兵站は無かった。南京なんて、中国全土から見れば沿岸部も沿岸部です。
 後背地を抱える国々に戦争を仕掛けるのは自殺行為だという教訓を明確に与えたのが、先の大戦でした。
 そのことは、その次々の戦争でも繰り返された。朝鮮戦争でもベトナム戦争でも、アメリカは、中ソという後背地に苦しめられた。
 今またウクライナは、中国という後背地を持つロシアに苦しめられている。ウクライナには、厳密な意味では、後背地はない。彼らは、自身の国土を失ったらそこで終わりです。

 そのことは、日本も同様です。われわれは海という天然の要害に守られてはいるものの、いったん国土を失ったら、回復する術はありません。

 トランプ政権の矢継ぎ早の過激な政策に振り回され、同盟国の間に動揺が拡がっています。果たして、真の敵は中国なのか? アメリカなのかと。
 しかし、私たちは、血で贖い、アジア各国に多大な迷惑を掛けて学んだ歴史を忘れてはなりません。
 アメリカは時に居丈高に振る舞う。しかし、少なくとも、日本を囲む非文明的で敵対的な全体主義国家に比べれば、はるかにましで頼れる国です。ほんの僅かのみかじめ料を払うだけで、夜道の見回りもしてくれる。そして気前よく買い物もしてくれる。
 アメリカは分裂し、疲弊しきっている。しかし、今後とも引き続き、後背地としてわが国の安全に貢献してくれることでしょう。
 彼らが、民主主義の輝けるリーダーとして復活するには時間が掛かるかもしれませんが、われわれはその日を忍耐強く待つしかありません。

〔大石英司/2025年2月〕

BOC
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