C★NOVELS
これまでに無い兵器や情報を駆使する新時代の戦争は最終局面を迎えた。各国がそれぞれの思惑で動く中、中国軍の最後の反撃が水陸機動団長となった土門に迫る!? シリーズ完結。
カバー:安田忠幸
新書判/224ページ/定価:1078円(10%税込)
ISBN978-412-501411-1
世界中が、新型肺炎の脅威に恐れおののいています。これまで何冊も感染症ものを書いて来た私の知見の範囲内で言えば、この病気は、来年の今頃は、ただのありふれた風邪として普通に出回り、誰も気にもとめていないはずです。季節性インフルエンザの方が遥かに怖いし、今、インフルエンザと言えば、その大凡は、かつて「新型インフルエンザ」として恐れられたタイプです。
人間はかくも忘れやすく、同時に未知なるものへの恐怖を抱く。何しろ、経済活動を停止しても、その拡大を阻止せよという世論があります。そこに合理性はあるのか? 私は無いと思っています。公衆衛生の最大の脅威は、昔も今も貧困です。
一人でも多くの人間を救おうと思うなら、われわれはまず景気を上げて、一人でも多くの人間に、まともな衣食住を与えるべきです。
そういうことを主張する政治家がいないのは残念です。所詮、国民のレベルを超える政治は戴けないということでしょう。世界がこの現象を横並びで恐れていることにも甚だ疑問を感じます。一カ国くらい、ただの風邪の押さえ込みに皆躍起になって、他方で経済を殺していったいこの問題のコスト・パフォーマンスはどうなっているのだ? と冷静に行動する国家や民族がひとつくらいあってもよさそうなものですが。
ともあれ、この疫病で、米中対決は一休みです......。と言っていいのか? 疫病と戦争、そして文明は密接な繋がりがあります。産業革命は、結核をあっという間に都市から地方に広げました。スペイン風邪が広がったのは、第一次大戦末期です。
この疫病のせいで、中国では現指導部が揺らいでいます。日本でも安倍政権の支持率が落ちてきた。
疫病と戦争は似ています。どれも皆、平時から十分に備えているつもりなのに、いざ直面すると、皆パニックに陥り右往左往し、その途中経過は見るも無惨で、しかも結末は誰にも予測出来ない。僅かな救いがあるとすれば、その混乱が終わった後には、しばしの平和が訪れるということです。もちろん、それは次の戦争がはじまるまで、次の疫病が、どこかで静かに蔓延し始めるまでの間なれど......。
〔大石英司/2020年3月〕