「悲劇的な最期を遂げた軍艦や、武勲を立てる機会に恵まれなかった軍艦に、敗者復活戦の機会を与えたい」
　というのが、筆者にとっての、架空戦記小説の執筆動機の一つです。
　今回のシリーズで、英本国艦隊の旗艦を務めた「プリンス・オブ・ウェールズ」も、史実において、悲劇的な最期を遂げた軍艦の一隻でした。
　同艦の最期についてはよく知られていますので、ここでは繰り返しませんが、本シリーズでは祖国の解放を目指す英本国艦隊の旗艦という栄光ある役割を務め、第五巻でドイツ海軍に接収された姉妹艦と相打ちになりました。
　姉妹艦同士の骨肉相食む戦いで沈むというのも、史実に劣らぬ悲劇ではありましたが、持てる力を存分に発揮した上での沈没ですので、悔いの残らない終わり方だったのではないか、と思います。

〔横山信義／2023年6月〕