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台湾侵攻9

C★NOVELS

台湾侵攻9
ドローン戦争

大石英司 著

中国人民解放軍が作りだした人工雲は、日台両軍を未曽有の混乱に陥れた。そのさなかに送り込まれた第3梯団を水際で迎え撃つため、陸海空で文字どおり"五里霧中"の死闘が始まる!

カバー:安田忠幸
新書判/224ページ/定価:1100円(10%税込)
ISBN978-412-501462-3


たいわんしんこう9
どろーんせんそう


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コメント

 新年早々、台湾情勢を巡ってニュースを独占した話題があります。米戦略国際問題研究所(CSIS)が発表した「The First Battle of the Next War: Wargaming a Chinese Invasion of Taiwan」というレポートです。このレポート、実はCSISのサイトから誰でもダウンロードできるのですが、一般人にも読ませることを前提としたレポートとしては、わりと珍しい160頁を超える、大部な論文に仕上がっています。
 もし中国が台湾に侵攻した場合、勝てるかも知れないが、それは日本の全面的な参戦を必要とし、その場合は日本もそれなりの犠牲を強いられるという刺激的な内容で、国内では、台湾有事に日本が自動的に参戦させられる! と批判を招いたりもしました。
 ウォーシミュレーションは、それが現実に起こることを大前提としてやるわけです。それがどういう理由でエスカレーションの階段を上り、開戦に至るかを論じるものではありません(それはそれでいろんなシミュレーションが出来る)。たとえば今回のロシアのウクライナ侵略のように、エスカレーションもクソもない、独裁者の単なる野望や妄想で始まってしまうこともあります。残念ながら中国に関しても、その懸念がないわけではありません。
 台湾有事が発生した場合、日本は自動的に巻き込まれてしまうのか? その戦争にコミットせずに済ますことは出来ないのか? ということは誰もが考えることです。そりゃ台湾は民主主義国家であるし、あの島が中国のものとなれば、日本の安全保障環境はがらりと変わって仕舞うことでしょう。とはいえ、戦争に巻き込まれる、あるいは参戦するというのは、大事です。疑いようもなく、戦後日本にとっての最大の決断となることでしょう。
 私の結論としては、台湾有事に巻き込まれることを回避するのは非常に困難です。
 本シリーズでは、一貫して中国が戦略を誤り、日本が積極参戦するしかない構図を描いて来ましたが、中国が、攻撃するのは台湾のみ、日本の参戦を阻止するために日本政府へは脅しと圧力を掛けるに留めるのみという戦略を取ったとしても、日本はある種、囚人のジレンマのような困難な状況に置かれることでしょう。
 戦狼外交に見られるように、損得で言えば、あきらかに非合理な外交を中国は繰り広げて来ました。現状認識としては、中国に合理的な判断を求めるのは難しいと言えるでしょう。それはプーチンに常識が通じないことと似ています。
 戦争に備えるということは、金銭面の苦労だけでなく、よほどの胆力が求められることです。ではそれより、平和は安上がりに手に入るのか? 平和という望ましい状態は、戦争という忌むべき悲惨より遙かに安上がりではあるが、それを達成するのは、戦争に備えるより難しいことかも知れません。ウクライナと台湾を巡る情勢が、その困難さを物語っていると言えるでしょう。

〔大石英司/2023年2月〕

BOC
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