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尖閣喪失

C★NOVELS

尖閣喪失

大石英司 著

ついに中国が実力行使に出た時、日本政府は、外務省は、自衛隊は......? 「尖閣諸島」をめぐる水面下での熾烈な駆け引きと軍事作戦の行方を、迫真の筆致で描く。あとがきと挿画を付した決定版。

カバー:安田忠幸
刊行日:2024/10/21
新書判/360ページ/定価:1320(10%税込)
ISBN978-412-501485-2


せんかくそうしつ



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コメント

 本書を執筆していたのは、丁度、民主党が志し半ばで下野を強いられた頃である。
 民主党政権はつくづくついていなかった。検察執念の復讐劇とも言える陸山会事件で、盟主小沢一郎が表立って動けない中、政権を担った鳩山政権は、普天間問題で外務省他の根強い抵抗に遭って迷走し、政権を委ねた菅内閣を、3.11震災という、未曾有の災害が襲った。その災害処理の巨額予算の返済のため、与野党協議の消費税増税を飲んだ野田政権は、当然下野することとなった。
 これほど不運に見舞われた政権も珍しい。日本の政治のほとんど9割は自民党政治の責任であったにも関わらず、まるで何かの罰を受けているかのようだった。
 その後の歴史は皮肉である。党員選挙では優勢だった石破氏は敗れて、安倍政権が誕生する。安倍政権は、結果として30年からの不況の脱出に失敗した。彼らは統計を弄り、日本経済が回復しているかのように偽装したが、私たちは、貴重な10年を無駄にしただけだった。そして、膨大な付けだけが残った。
 本書は、あの時、石破政権が誕生する前提で書いた。皮肉な巡り合わせとは、自民党ではようやく石破政権が誕生し、立憲(民主党)は、再度野田党首が返り咲いたことだ。
 つまり、あの時、本来なら誕生したかもしれない、もう一つの世界線、タイムライン、石破政権vs野田野党盟主の対決構造が、年月を経てここに、ようやく演出されたわけである。

 さて石破さんはやってくれるだろうか? スタート時の政策には正直、暗澹たる気配が漂う。個人的には、安倍政権以下の政策しか感じない。政権の持続度という意味で言えば、ここの四半世紀の自民党政権で、もっとも短命で終わるのでは? という悪い予感もする。
 対する中国は、私たちの未来予測を軽々とオーバーシュートして発展している。最近、景気の減速感が否めないが、軍事力は別である。そう、一度膨れ上がった軍隊は畳めないのだ。一度膨れ上がった軍事予算を縮小するのは至難の業である。
 私たちは、あとはただ坂道を転げ落ちるしか無い老いた日本という国を背負い、まだ坂の上の雲も見ていない昇り竜の中国とお付き合いしていかなければならない。
 石破政権が誕生すると解って以来、私の脳裏ではずっと「古色蒼然とした政治......」というフレーズが鳴り響いている。私たちが期待したものはそこには無かった。無かったことは明かだ。やっと石破さんが政権の座に就けたという達成感と、その幻滅感が私の中で相克している。

〔大石英司/2024年10月〕

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