C★NOVELS
台湾西岸に上陸した人民解放軍2万人を殲滅した台湾軍に、軍神・雷炎擁する部隊が奇襲を仕掛ける----邦人退避任務に〈サイレント・コア〉原田小隊も出動し、ついに司馬光がバヨネットを握る!
カバー:安田忠幸
刊行日:2022/2/21
新書判/208ページ/定価:1100(10%税込)
ISBN978-412-501447-0
世界にはオリンピック休戦なる便利な言葉があります。台湾のアスリートは北京オリンピックに参加しているし、紛争地帯から参加してきた選手たちに私たちは惜しみない拍手を送ります。と言っても私個人は、東京オリンピックも北京のそれも開会式すら一切見ていませんが......。
オリンピックが終われば、また何もかもが忙しなく動き始めることになります。中国のバブル潰しや、ウクライナ情勢を含めて。
さて、ウクライナ情勢からわれわれが学び取れることは何か? それは、極めてシンプルな一つの原因です。自らを救う(守る)意志がない者は溺れる。隣人に隙を突かれるということです。ウクライナは今回、自国の防衛をケチってNATOに丸投げすることで、ロシアという大熊に備えようとした。しかしロシアは、そうはさせじと、エネルギーや何やらで西側の暮らしを人質に取ってウクライナを始め世界を恫喝している。ロシアとウクライナの軍事力を比較すると、泣きたくなるほどの格差が生じている。
ここでロシアの行儀の悪さを非難しても始まらない。世界とはそういうものです。わが日本も、北朝鮮に中国、そしてロシアと、あまりお行儀のよろしくない国々と接し、日々脅しを受けている。
しかし、ウクライナ国防軍の兵力を見てみると、彼らがさぼっていたわけではないのです。人口と国力に照らし、最低限の軍事力を維持出来ていたと言える。ただしそれは、怒ったロシアの相手をするには、あまりにも不十分だったという規模です。
同様のことは日本にも言えます。日本の国力と周辺状況に照らして、自衛隊の戦力はさぼっていると批判できるほど小さくは無い。今の、集団安保体制に移行して国軍を削りまくっているNATO各国、たとえばドイツや英国と比較しても、それなりの規模の軍事力を維持できていると言えます。
しかし残念ながら、中国の軍拡に対応出来るほどの規模での整備が出来ているとはとうてい言い難い。それは正面装備の更新だけでなく、サイバー戦争を含めて、お寒い限りです。
しかし、しかし......、と続きますが、自衛力の整備には時間が掛かり、30年不況が続く日本には、人も金もない。そういう厳しい状況下で何ができるか? そこでまた反面教師となるのはウクライナです。こちらから仕掛けて戦争を起こすわけにはいかない。ここではやって行けないことがあった。ウクライナのNATO加盟はもう少し慎重に立ち回るべきだった。
限られた軍事力で生き延びるために、相手を挑発せず、時間稼ぎに徹することです。
相手が疲弊するまで、あるいは相手が状況に満足するまで時間稼ぎするしかない。中国の軍拡がいつか終わる日が来るのか? それは解らない。しかし、ホット・ウォーを回避するためにわれわれが出来ることは時間稼ぎです。
それは言うほど簡単なことではありません。国民のプライドを傷つける後ろ向きな戦略です。それには屈辱的な忍従と強い自制も必要になる。
それを求められているのは、日本だけではなく、台湾も同様です。そういう意味では、日本と台湾は、同じ船に乗っていると言えるでしょう。
〔大石英司/2022年2月〕