C★NOVELS
《サイレント・コア》土門陸将補のもとに、ある不穏な一報が入った。尖閣に味方部隊が上陸したというのだ。探りをいれると、島に上陸したのは意外な部隊だとわかり?
カバー:安田忠幸
刊行日:2021/3/23
新書判/216ページ/定価:1100(10%税込)
ISBN978-412-501429-6
私がこの原稿を書いている頃、アメリカの国務国防両長官が訪日訪韓し、いわゆる2+2閣僚会合なるものが開かれています。バイデン政権が発足して2ヶ月、素早い外交展開だと言えるでしょう。
一方では北朝鮮の弾道弾発射の兆候もあり、米国務国防両長官は、そのまま北京に飛ぶかと思いきや、わざわざ帰路のアラスカに中国の外交2トップを呼びつけての会談が行われます。中国側からは当然、そのまま北京に来ればいいじゃん? という申し出があったわけですが、それだと朝貢外交に見えかねないので、ワシントンDCと北京の中間、アラスカでの会談となったわけです。
アジア情勢は、コロナ禍、ミャンマーでのクーデター、ウイグルでの民族弾圧を巡って、変数の多い複雑な舵取りを強いられています。本シリーズにも登場するウイグルでの民族弾圧を巡っては、それをジェノサイドと判断するか否かを巡って国際世論が割れています。日本の外務省は、ジェノサイドでは無いという立場を取っていますが、米政府は揺れています。国務省辺りはジェノサイドだと判断していますが、現状では、バイデン自身は、ジェノサイドではないという立場をとっているのです。
この辺りのことは、来年の北京での冬期オリンピックのボイコット問題を孕んでいるためにハンドリングが難しい問題になりつつあります。
さて、日中を巡っては、海警法改正というやっかいな問題が生じています。この法律は明らかに尖閣諸島奪取を念頭にした法改正なのですが、では日本として、何か有効な対抗措置が出来るかと言えば、それも困難です。外務省は、この海警法改正が、直ちに国際法に違反するものではないとする微妙な判断をしています。
中国は、この辺り、極めて老獪な国で、岩礁地帯の埋め立て=軍事基地化を進めたり強引なことはしていますが、実は国際法には敏感な国で、いつも国際法ぎりぎりのグレーゾーンを突いてきます。あからさまに国際法を侵犯するような真似は滅多にしません。
だから、われわれの対応もなかなか難しいと言えるでしょう。隣国とのお付き合いというものは、それが同盟国であれ、仮想敵国であれ、なかなか忍耐と根気、そして徹底した冷静さが必要なテーマです。
〔大石英司/2021年3月〕