本シリーズの第四巻から登場した松型駆逐艦は、輸送、揚陸、護衛を主目的に設計・建造された戦時急造型の艦でした。
　艦隊型駆逐艦に比べると、スマートさに欠けるものの、実用本位の武骨さがあり、独特の魅力を持っています。
　同級は、昭和一九年四月から二〇年六月にかけて三二隻が竣工し、九隻が未完成のまま終戦を迎えました。
　第五巻からは、この松型の兵装をより護衛任務に適するよう変更した改良型が登場し、Ｕボートとの戦いを繰り広げます。
　このクラスの名前は植物から採るという決まりがありますので、松型の艦名一覧と植物図鑑を突き合わせ、史実の松型とダブリが生じないようにして、一番艦は「桔梗（ききょう）」、二番艦以降は「柚（ゆず）」「蘭（らん）」「蓮華（れんげ）」「菖蒲（しょうぶ）」「梔（くちなし）」「榊（さかき）」「芹（せり）」「柘榴（ざくろ）」「竜胆（りんどう）」と設定しました。
　これら全てを作中に登場させる余裕はありませんが、こういったオリジナルの艦名を設定するのも、架空戦記を書く楽しみの一つです。

〔横山信義／2023年4月〕