昭和歌謡史古賀政男、東海林太郎から、美空ひばり、中森明菜まで
刑部芳則 著
日本人の心を躍らせ、泣かせてきた昭和の歌謡曲。その礎は中山晋平、西條八十が築き、三大作曲家の古賀政男、古関裕而、服部良一によって確立する。時代は戦争、敗戦と復興、高度成長へと進み、視聴手段もレコード、ラジオからテレビへと変化する。本書は作詞家、作曲家、歌手らが残した膨大な史料を用いて実証的に考察。数々の名曲が生まれた背景とその特徴を炙り出す。人はなぜ昭和歌謡に魅了されるのか。
目次
- はじめに
- 序章 昭和歌謡の夜明け前
- 「流行歌」と「歌謡曲」/「昭和歌謡」とは何か/中山晋平が築いた基本形態/西條八十の改心/「流行歌作りの天才」古賀政男/国民的作曲家・古関裕而/服部良一は日本ポップスの元祖/レコード産業の勃興―外資系と国産会社―
- コラム1 古賀メロディーは「演歌」ではなく歌謡曲
- 第一章 昭和歌謡の夜明け――昭和三年~一三年(一九二八~三八)
- 流行歌手第一号・佐藤千夜子/「東京行進曲」をめぐる論争/芸者歌手第一号・藤本二三吉/オペラ華やかな時代の歌手たち/藤山一郎の登場/現実を直視した歌と逃避した歌/時局を色濃くあらわした歌謡曲/柳を愛した西條八十/天才がライバル視した江口夜詩/苦労する古関裕而と服部良一/松平晃とミス・コロムビア/芸者歌手/小唄の女王・小唄勝太郎の人気/「東京音頭」フィーバー/「大阪音頭」で対抗するコロムビア/「大名古屋祭」から始まる地域振興の行進曲/豆千代と音丸/天才に対抗する佐々木俊一/東海林太郎の登場/スカウト歌手の小野巡/楠木繁夫の活躍/デュエットソングの登場/藤山一郎と古賀政男の再会/ジャズで歌謡曲を歌うディック・ミネ/内務省が敵視した甘い歌声/「ねぇ小唄」の流行と取締り/「トンガリ五人組」の明暗/上原敏の活躍と「やくざもの」の位置づけ
- コラム2 芸能界を追放された初の歌手・橋本一郎
- コラム3 流行歌によって変わった童謡
- コラム4 昭和歌謡と韓国歌謡とは兄弟
- 第二章 戦時歌謡――昭和一二年~一五年(一九三七~四〇)
- 戦時歌謡が流行った時代/ブルースの女王・淡谷のり子/戦線と故郷をつなぐ心の絆/戦時下の母と子を歌った「母もの」/泥沼化する戦線の「たよりもの」/戦場の風景を描いた「兵隊もの」/「軍歌の覇王」古関裕而の人気急上昇/「愛国行進曲」から盛り上がる国民歌/大衆が涙を流す「父よあなたは強かった」/映画『愛染かつら』の主題歌「旅の夜風」の大ヒット/「流行歌作りの秀才」万城目正の活躍/服部良一の斬新なメロディー/ラジオでヒット曲が流れる頻度は少ない/ヒット曲は街のなかから聞こえる/歌う映画女優・高峰三枝子/上海ブームと花売娘と踊り子/苦労したイケメン歌手・伊藤久男/灰田勝彦のヒットと受難/中国大陸の戦地から流行した「誰か故郷を想はざる」/日本が建国されて二六〇〇年の奉祝ブーム/流行歌界の栄枯盛衰/服部メロディーに見る「本音」と「建て前」/戦争遺家族に送る鎮魂歌「戦場初舞台」/開戦前のモダニズムの輝き
- 第三章 暗い戦争と明るい歌謡曲――昭和一六年~二〇年(一九四一~四五)
- 国策を重視し、大衆性から離れる/スパイに注意せよ/皇族たちも楽しんだ「瑞穂踊り」/戦時経済や生活を題材にした作品/意外にも少ない発売禁止/ビクターのヒット戦略/日本文化の「舞踊歌謡」というカムフラージュ/服部良一は戦時歌謡を作らなかった?/古賀メロディーの明朗路線の魅力/太平洋戦争中のヒット曲/古関裕而のヒットの秘訣/幻のレコード「同期の桜」/新譜よりも愛される旧譜
- 第四章 戦後復興の歌声――昭和二〇年~三三年(一九四五~五八)
- 忘れられたヒット曲と生き残ったヒット曲/生き残った国民の生きる希望/復員船が港につく光景/米兵に体を売る女性たち―一億総懺悔の歌―/平野愛子の明さと暗さとが交わるブルース/岡晴夫の花売娘、パラダイス、小鳩シリーズ/ブギの女王・笠置シヅ子/終戦後の世相を反映した「ズルチンボーイ」/遅咲きの近江俊郎と古賀メロディーの復活/シベリア抑留生活を支えた歌/長崎にザボン売りはいなかった/ハワイへの憧れ/青い山脈/天才少女歌手の登場/リルを探して三千里/NHK『紅白歌合戦』の放送開始/渡辺はま子の歌声が救った一〇八名の命/二つのワルツ―洋楽と邦楽のせめぎ合い―/歌手人生をかけた「赤いランプの終列車」/「野球けん」ブーム/歌舞伎から生まれた「お富さん」と「与三さん」/シベリア抑留という戦争の傷跡/戦争の傷跡を背負った子供たち
- 第五章 歌謡曲の新旧交代――昭和三〇年~三九年(一九五五~六四)
- 望郷歌謡/「ふるさと路線」の王者・三橋美智也/職業歌謡/吉田正と都会派のムード歌謡/男女の発展場と別れのシーンの変化/島倉千代子の作品変化/第一回レコード大賞―歌謡曲の新旧交代―浪曲の終焉/和製ポップスと外国曲のカバー/西田佐知子の記憶に残った歌/御三家と青春歌謡/遠藤実と歌謡曲の変化/市川昭介と歌謡曲の変化/「演歌」を生んだ船村徹/オリンピック東京大会と「東京五輪音頭」
- コラム5 音頭はイベントの定番曲
- 第六章 歌謡曲の細分化――昭和四〇年~四九年(一九六五~七四)
- 歌謡曲の曲がり角/『なつかしの歌声』/『紅白歌合戦』に対抗する『なつかしの歌声・年忘れ大行進』/NHKの『思い出のメロディー』/昭和天皇の侍従も見た「年忘れ」と「紅白」/「軍歌ブーム」と消えていく戦時歌謡/懐メロのカバーでも「演歌」とそれ以外とに分離/グループ・サウンズの台頭/ムード歌謡/ご当地ソング/ピンク映画とアダルト歌謡/任侠映画と「演歌」/学生運動の若者と中高年から支持される「演歌」/なかにし礼の戦争体験から生まれた/「希代のヒットメーカー」筒美京平/阿久悠の登場/結婚生活と同棲生活との新旧価値観
- コラム6 委託盤の帝王と女王―三鷹淳とわかばちどり―
- コラム7 ホステス歌謡とホステス歌手
- 第七章 歌謡曲の栄光から斜陽――昭和五〇年~六三年(一九七五~八八)
- 不滅と思われた歌謡曲の行方/テレビの普及とレコードの拡大/『スター誕生!』と『君こそスターだ!』/こんなにもあった賞レース/山口百恵のスター性/キャンディーズとピンク・レディー―踊る歌謡曲―/岩崎宏美の歌唱力/昭和歌謡の父・古賀政男の逝去/歌謡曲に近づくニューミュージック/名編曲家の萩田光雄と船山基紀/どこからが「演歌」、どこからが歌謡曲/歌謡曲・演歌・ニューミュージックの分離/シティーポップの不思議な新鮮味/シティーポップに哀愁はないか?/「演歌」に組み込まれた歌謡曲/ポップス寄りの歌謡曲と「演歌」寄りの歌謡曲/アイドルに生き続けた歌謡曲
- コラム8 よく聴くとそっくりな歌
- コラム9 渡辺宙明、水木一郎、堀江美都子の特ソンとアニソン
- 終章 昭和歌謡は輝いている
- 1990年のJ -POPという大波/昭和歌謡番組とショーレースの終焉/歌謡曲が枝分かれした結末/筒美京平の限界/阿久悠の「昭和歌謡」への想い/ニューミュジックも歌謡曲に聴こえてしまう/歌謡曲は健在
- あとがき
- 参考文献
- 註
書誌データ
- 初版刊行日2024/8/20
- 判型新書判
- ページ数384ページ
- 定価1155円(10%税込)
- ISBNコードISBN978-4-12-102818-1
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書評掲載案内
・読売新聞(朝刊)2024年10月27日
・東京新聞(朝刊)2024年9月28日
・産経新聞(朝刊)2024年9月15日/著者インタビュー
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