2020 06/10
編集部だより

「同時発売」の舞台裏

2020年5月20日。ドイツから遠く離れた日本で、2冊の本が出版されました。
岩波新書の『マックス・ヴェーバー』(今野元・著)と中公新書の『マックス・ウェーバー』(野口雅弘・著)です。

岩波新書からウェーバーの評伝が出されると知ったとき、まったく驚きませんでした。

野口さんにはじめてお目にかかったのは、2019年2月のこと。成蹊大学の研究室でした。訪問の用件はむろん、2020年6月14日に控えた「没後100年」に合わせて「マックス・ウェーバー」というテーマでご執筆をお願いしたい、という相談です。実は、連絡を差し上げたときは「他社から同様の依頼があってもおかしくない」と内心かなりやきもきし、「なぜウェーバーの没年にもっとはやく気づかなかったのだろう」と自分を責めていました。

「100年」は、とても大きな区切りですし、そのタイミングでウェーバーの評伝を刊行するのは、ちょっと考えれば思いつくような、王道で、つまりは平凡な企画なのです(書籍の評価は読者のみなさまに委ねるとして、企画性には乏しい、という意味です)。

野口さんは、快く執筆を受けてくださいました(なんと、打ち合わせの翌日に企画書をくださったのです!)。
そこから先は世の常で、必ずしも平坦な道ではありませんでしたが、無事に刊行にこぎ着けました。

そして2020年5月20日――『マックス・ヴェーバー』と『マックス・ウェーバー』が発売。「同時発売」もひとつの大きな話題になり、売れ行きの後押しを感じます。
本の幸福は、読まれることにあると考えています。多くの読者を得られて、とても幸せな本だ、と世に送り出す手伝いをした担当者としては安堵しているところです。

* * *

さて、そんなわけで、ウェーバーの評伝は双方の出版社がタイミングを狙って出版した結果「同時発売」になりましたが、5年前には同じテーマで同月発売、という偶然もありました。
2015年12月の岩波新書『蘇我氏の古代』(吉村武彦・著)、中公新書『蘇我氏』(倉本一宏・著)です。
研究が蓄積され、進展したことで、たまたま同じ時期に同じ題材を描いた、ということなのでしょうか。古代史はファンが多いジャンルですが、2015年当時、蘇我氏ブームだったとも考えにくいような......(笑)
この同月発売も、読者のみなさまには好意的に受け取られたようで、朝日新聞、読売新聞に2冊合わせての書評が掲載されるなどしました。読み比べてくださった方も少なからずいるでしょう。

2017年には、(同時発売ではありませんが)テーマの重なる新書をピックアップして、合同で「真剣対決! 8番勝負」フェアを開催しました。ラインナップを下に記します。

歴史『風土記の世界』(三浦佑之・著)/『「古事記」神話の謎を解く』(西條勉・著)
キリスト教『マルティン・ルター』(徳善義和・著)/『聖書考古学』(長谷川修一・著)
音楽『音楽の基礎』(芥川也寸志・著)/『西洋音楽史』(岡田暁生・著)
政治『多数決を疑う』(坂井豊貴・著)/『代議制民主主義』(待鳥聡史・著)
文章『文章の書き方』(辰濃和男・著)/『「超」文章法』(野口悠紀雄・著)
外国語『外国語学習の科学』(白井恭弘・著)/『英文法の魅力』(里中哲彦・著)
新書大賞『ルポ 貧困大国アメリカ』(堤未果・著)/『地方消滅』(増田寛也・編著)
ジャガイモ『ジャガイモのきた道』(山本紀夫・著)/『ジャガイモの世界史』(伊藤章治・著)

2017年開催「真剣対決! 8番勝負」フェアのPOP


2018年1月に配信開始された「B面の岩波新書」「編集長を訪ねて」の連載では、1回目に中公新書の当時の編集長も登場し、創刊からの歴史や、「新書とは何か」という話題まで語っています。

とりとめのない文章でしたが、近年の岩波新書さんとのつながりをご紹介しました。
実は水面下で、書籍の企画から刊行、販売、そしてそれ以外の場面でも、常に切磋琢磨し、協力もしているのです。
これからも、新書の先輩(1938年創刊の大ベテラン!)を仰ぎ見ながら、負けじと頑張るぞ、という気持ちを新たにしました。(亮)