レコンキスタ―「スペイン」を生んだ中世800年の戦争と平和
黒田祐我 著
8世紀の初め、ジブラルタル海峡を渡ってイベリア半島、さらにフランスまでを席巻したイスラーム勢力。その後はキリスト教徒側が少しずつ押し戻し、1492年のグラナダ陥落でイスラーム勢力を駆逐した。この800年に及ぶ「聖戦」はレコンキスタの一語でまとめられてきた。だが、どちらの勢力も一枚岩ではなく、戦争と平和、寛容と不寛容、融和と軋轢が交錯していた。レコンキスタの全貌を明かす、初の通史。
目次
- はじめに
- 第一章 レコンキスタ前史
- 1 地理環境とたどった歴史との深い関係
東西南北の結節点 分断され多様性を育んだ場 - 2 古代ヒスパニアの歴史
諸民族のるつぼ 属州ヒスパニア 西ゴート王国の盛衰
- 第二章 アンダルスの成立と後ウマイヤ朝の栄華
- 1 イベリア半島の征服
「フリアン伝承」――西ゴート王国社会の分断を示すエピソード イベリア半島への上陸と征服 - 2 アンダルスの成立
征服か併合か?――アンダルス成立をめぐる議論① アラブ化・イスラーム化の是非――アンダルス成立をめぐる議論② アンダルスの社会構造 - 3 後ウマイヤ朝治下のアンダルス
後ウマイヤ朝の成立 アンダルス社会の変容(八世紀~九世紀) コルドバの殉教運動――九世紀後半の社会的危機① 反乱の激化――九世紀後半の社会的危機② 辺境領域の動向 - 4 カリフ制の成立
アンダルス社会の成熟 寛容の理想郷? 最盛期の明暗
- 第三章 レコンキスタのはじまり
- 1 アストゥリアス王国の成立
レコンキスタとは? コバドンガの戦い 脱神話化 - 2 レコンキスタの開始?
もうひとつの神話:「ノーマンズ・ランド」? アストゥリアス王国の拡大聖ヤコブ崇敬とレコンキスタ・イデオロギー - 3 様々な「レコンキスタ」のあり方
イベリア半島北東部の特徴 ナバーラ王国のはじまり カタルーニャ諸伯領のはじまり キリスト教諸国の確立と分岐
- 第四章 力関係の逆転
- 1 マクロ視点から見た一一世紀 西欧世界と地中海
社会的な「革命」 経済的な「革命」 宗教的な「革命」 - 2 第一次ターイファ時代
後ウマイヤ朝の滅亡 ターイファ諸国の「栄華」 歪な蜜月関係――パーリア制 - 3 キリスト教諸国の優位
カスティーリャ・レオン王の覇権 皇帝を名乗ったアルフォンソ六世 合従連衡――半島北東部情勢 - 4 劇的な状況変化
それぞれの思惑――ターイファ諸国とアルフォンソ六世 直接支配の開始 ムラービト朝の介入
- 第五章 一進一退の攻防
- 1 キリスト教諸国の混乱と成長
カスティーリャ・レオンの危機 カスティーリャ・レオンの再編 エブロ川流域の征服活動 アラゴン連合王国の成立 - 2 風雲急を告げるマグリブ・アンダルス
ムラービト朝の滅亡 第二次ターイファ時代と征服活動の進展 ムワッヒド朝の登壇とアルフォンソ七世の夢 - 3 「私利私欲」で動く国々
ムワッヒド朝によるアンダルス支配 相争うキリスト教諸王国 ラス・ナバス会戦 - 4 「大レコンキスタ」
第三次ターイファ時代 キリスト教諸国の動静 カスティーリャによる大征服 レコンキスタの完了?
- 第六章 征服活動の実態
- 1 「宗教戦争」をめぐる本音と建て前
非妥協的な宗教対立の時代? 戦争の実態 征服が成功した時期の短さ - 2 征服活動
強襲――征服活動の類型① 強制退去――征服活動の類型② 残留許可――征服活動の類型③ 征服がもたらした結果――トレードの事例より - 3 共存の実態
モサラベ ムデハル ユダヤ人 「寛容」なのか? 「不寛容」なのか?――二者択一では把握できない実態
- 第七章 中世後期の危機
- 1 「フロンティアの閉鎖」
ナスル朝グラナダ――最後のアンダルス王朝 アルフォンソ一〇世時代の明暗 中世後期の危機とその影響 - 2 「海峡戦争」
ジブラルタル海峡に目を向ける諸勢力 目まぐるしく展開する合従連衡 アルフォンソ一一世の征服活動 「海峡戦争」の終結 - 3 危機の本格的到来トラスタマラ内戦 カスティーリャ王国の立て直し アラゴン連合王国の地中海進出と停滞 ナスル朝の最盛期――奇妙なねじれ現象
- 第八章 アンダルスの黄昏
- 1 攻勢に出るカスティーリャ王国
第一次グラナダ戦役――摂政フェルナンドの時代 第二次グラナダ戦役 フアン二世の時代 第三次グラナダ戦役――エンリケ四世の時代 - 2 近隣諸国と辺境の動向
ナスル朝の衰退とカスティーリャの介入 アラゴン連合王国とその他の諸国カスティーリャ辺境領域 - 3 「グラナダ戦争」(一四八二〜一四九二年)
歴史の偶然か必然か?――カトリック両王の登壇 対異教徒認識の変化? ナスル朝の滅亡
- 終章 レコンキスタの終わり?
- 中世と近世のはざまにあった戦争 同化か移住か 「近世化」――ナスル朝滅亡後の急激な変化 モリスコ問題を経て、いま
- あとがき
- 本書に関連する時代の略年表
- 参考文献
- 事項索引
- 人名索引
書誌データ
- 初版刊行日2024/9/19
- 判型新書判
- ページ数336ページ
- 定価1210円(10%税込)
- ISBNコードISBN978-4-12-102820-4
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・朝日新聞(朝刊)2024年10月26日/佐藤雄基(立教大学教授)