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中西進 著
つひにゆく道とはかねて聞しかどきのふけふとは思はざりしを――。世に知られた在原業平の臨終の歌である。この歌を契沖や本居宣長は死に臨んでの人間の偽りのないまことの心としているが、契沖も万感こもることばを遺し、宣長にも有名な遺言状に添えた「詠草」がある。このように古来、日本人は末期の感懐を様々のことばに託してきた。その中から六〇人を選び出し、死へのまなざしが生んだ純粋な自己発見の姿を探り出す。