
死とは何か宗教が挑んできた人生最後の謎
中村圭志 著
死んだらどうなるのか。天国はあるのか。まだまだ生きたい。来世で逢おう――。尽きせぬ謎だからこそ、古来、人間は死や転生、不老長寿を語り継いできた。本書は、死をめぐる諸宗教の神話・教え・思想を歴史的に通覧し、「死とは何か」に答える。ギリシアや日本の神話、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教から、ヒンドゥー教、仏教、さらに儒教、神道まで。浮世の煩悩をはらい、希望へいざなう「死の練習」帳。
目次
- まえがき
- 序 章 物理的な死と来世観の始まり
- 1 二元論(霊魂説)への懐疑
- 物理主義と二元論
- どちらが説明として優れているか?
- 2 来世、先祖、転生
- 霊魂信仰と葬式の起源
- 来世観よりも切実な葬送の儀礼
- 先祖という権威
- 生まれ変わりのモチーフ
- 3 文学的・思想的な組織化
- 来世についての語りの進化
- 思想や情念からの介入
- PARTⅠ 古典的大宗教以前 死の文学と倫理の始まり
- 第1章 はっきりしない来世 日本神話の黄泉と常世
- 黄泉、常世、根の国――曖昧なる死者の空間
- 黄泉と死体の恐怖・穢れ 生と死の対決
- オルペウスの冥界降り
- 常世と根の国
- 現世の延長としての他界?
- 第2章 詩人の修辞 ギリシア神話のハーデース
- 多重な《指向的構え》と言葉の巧みさ
- 死すべき者、人間
- ホメロスの語る冥界探訪譚
- 大事なのはあくまで現世
- 地獄の先駆形?
- ウェルギリウスの冥界ランド
- 第3章 思想家の正義 密儀宗教とプラトン
- 密儀宗教――オルペウス教団とピタゴラス教団
- プラトンの独自な来世観
- 嬉々として死んだソクラテス
- 哲学は死の練習?
- 懐疑主義あるいは不可知論
- 第4章 神の介入 旧約聖書と終末の待望
- 古代イスラエル人の歴史
- 死後の世界シェオール
- 現世主義に生じた亀裂
- 終末論のディテール
- ゾロアスター教の影響?
- PARTⅡ 一神教の来世観 終末、復活と審判、天国と地獄
- 第5章 死を乗り越えた神人 キリストの復活
- キリスト教誕生の経緯
- パウロの思考法
- 終末観はどうなったか?
- 死後の来世はどうなった?
- 死後すぐに実現する救い
- 死後と終末後――肉体の有無
- 第6章 復讐と大団円 黙示録の世界
- 「ヨハネの黙示録」―― 終末のプロセス
- 黙示録のミーム
- 千年王国の解釈
- 「パウロの黙示録」と「ペトロの黙示録」
- 社会全体の救済
- 第7章 中間の発見 煉獄とダンテの『神曲』
- 地獄と煉獄の違い
- 煉獄誕生のプロセス
- 地獄・煉獄・天国三分法の文学化
- 地獄ツアーから始まる
- 南半球の煉獄山
- 天動説的な天国と神の至福直観
- 往生術、免罪符、宗教改革
- カトリックとプロテスタントの死闘
- 『天路歴程』の霊的サバイバルゲーム
- 第8章 あえて詮索しない来世 ユダヤ教とイスラム教
- ユダヤ教徒は死後の話をしない?
- イスラム教の来世観
- 終末の経緯
- 楽園と火獄の様子
- 現実社会の掟
- PARTⅢ 輪廻宗教の来世観 報いとしての転生と解脱
- 第9章 凡夫と修行者の運命 ウパニシャッドの輪廻観
- ヴェーダとウパニシャッド
- 五火二道説
- 輪廻説のダークサイド
- 民衆の信仰
- 第10章 変化する世界は苦である 釈迦の洞察
- 王子の悩みと悟り
- 苦、無常、無我
- 神話的世界観としての輪廻
- 『ダンマパダ』の聖句の輪廻的解釈
- 地獄の責め苦
- 釈迦の大いなる死
- 矢の教え
- 第11章 増殖する地獄界と天界 須弥山世界と『往生要集』
- 須弥山宇宙の中の輪廻空間
- 地獄界
- 餓鬼、畜生、阿修羅、人の境遇
- 幾重にも重なる天界
- 仮初の監獄と孤独な囚人たち
- 第12章 聖域としての浄土 念仏往生と各種の方便
- 浄土の起源
- 阿弥陀仏を念ずる
- 救済のイメージトレーニング
- 極楽浄土の情景
- 源信の実践法
- 念仏至上主義
- 法華信仰
- PARTⅣ 古典的大宗教の周辺(パラ)と以後(ポスト) 来世観から死生観へ
- 第13章 祖先祭祀と不老不死 儒教と道教の来世観
- 儒教の祖先祭祀
- 孔子の不可知論
- 道教の「生への執着」
- 不老長寿は東洋の錬金術?
- 仏教の中国化――『父母恩重経』と『盂蘭盆経』
- 仏教か道教か?――官僚主義的な地獄ビジョン
- 不可知論? 祖先祭祀? 不老不死? 十王信仰?
- 第14章 来世論への禁欲と耽溺 本居宣長と平田篤胤
- 日本仏教の変容――鎮護国家から葬式仏教まで
- 儒教と道教の影響
- 「神道」の創出――本地垂迹説から国学まで
- 神道としての来世観の始まり
- 死後について追究しない?――本居宣長
- 原理主義か懐疑主義か?
- 幽世から子孫を見守る――平田篤胤
- 童子の臨死体験
- 幽冥界のその後
- 第15章 オカルトの台頭 近代西洋の心霊主義
- 一九世紀欧米の心霊主義
- なぜ心霊主義が求められたか?
- 柳宗悦の場合
- スヴェーデンボリと神智学
- 浅野和三郎と宮沢賢治
- ニューエイジへ
- 第16章 死の言説の再構築 死生観と死生学
- 「死生観」言説の誕生
- 「武士道」言説と忠君的死生観
- 戦争で死にゆく者の断裂
- 死生観のその後
- 欧米人の死生観
- 死生学とグリーフケア死の通説を検証する哲学
- 終 章 現代人にとって死とは何か――「自然に帰る」の意味
- 過去の時代のワイルドな来世観
- 死の問題の回帰
- 一方では死の覚悟、他方では死者の霊の実感
- 自然に帰る?
- 結論
- あとがき
- 参考文献
書誌データ
- 初版刊行日2024/10/21
- 判型新書判
- ページ数320ページ
- 定価1100円(10%税込)
- ISBNコードISBN978-4-12-102827-3
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