2017 02/14
編集部だより

子どもという無秩序

「編集者ごとに担当分野が決まってるんですか?」

研究者や新聞記者の方々から、たびたびそう聞かれます。専門を持っている皆さんからするとずいぶん適当に思われるかもしれませんが、アカデミックな内容の作品が多い中公新書でも、編集者に決まった担当分野はありません。前々回の当コーナーで(藤)が書いていたとおりですね。

とはいえ、各人ごとに興味関心、得意不得意の違いがあり、自然と偏りが出ます。私の場合、手がけている冊数が多いのは「政治」に関する本です。

そして、いつの間にかもうひとつの柱になりつつあるのが「人口減少」「少子化」「ワークライフバランス」といったテーマ。これまで『地方消滅』『仕事と家族』『人口と日本経済』といった作品に携わることができました。

さらにこの4月に刊行予定なのが、ずばり『保育園問題』。私事ですが、我が家にも昨年子どもが誕生しました。出産前から「保活」に向き合うなかで、この社会問題を新書で扱いたいと感じていたところ、以前からのご縁もあり、実現に至った次第です。

都市部の待機児童問題はもちろん、過疎地での子育ての実情に至るまで、幅広く、冷静に(しかし心は熱く)、論じています。ぜひご一読を。

最後に、他社の新書になりますが、心に響いた文章を紹介させてください。

「子どもという存在は、そもそも無秩序なものです」「日本人は日本が存続し続けるために、こうした一定の無秩序、混乱、完璧ではないことを受け入れる必要がある。私たち日本好きの人間にとっては、日本が人口減少で没落していくのは残念なことです」
(エマニュエル・トッド著、堀茂樹訳『問題は英国ではない、EUなのだ』222ページより)

日本社会はすばらしく整っているがゆえに、子どもをはじめとした無秩序を受け入れるゆとりを失っているのかもしれません。

そうした余裕を持つことが、『人口と日本経済』で論じられている「イノベーション」の可能性にもつながるように感じます。

無秩序や混乱から生まれるパワーを信じて、子育てと編集に励みます......あ、もちろん、乱丁や誤字脱字のある本をつくるという意味ではないので、ご安心ください。
(田)