
イタリア食紀行南北1200キロの農山漁村と郷土料理
大石尚子 著
隣町に行けば言葉もパスタも変わる――。イタリア料理は味わいのみならず、多様性が魅力。地域の風土・歴史に根ざした食材や伝統料理法が受け継がれているのだ。著者は南・北・中央・島々をめぐり、ポベラッチャ(貧乏食)の知恵を足と舌で探る。またアグリツーリズムや有機農業、スローフード運動など、地域再生のソーシャル・イノベーションにも注目。人口減少が進む日本の地方にとって、有益なヒントが満載。写真多数。
目次
- はじめに―食と社会の未来を求めて
- 世界初・食をテーマにしたミラノ万博 日本とイタリアの類似性 農村が未来を切り拓く
- 第1章 身土不二―地域に根ざした食の多様性
- ランチは家でマンマの手づくり まちにあふれるメルカート―野菜・畜産・魚介 隣町に行けば言葉もパスタも変わる ハレとケ―イタリア料理の誕生と南北問題 資本主義競争に打ち勝ってきたブランド力 知と融合するス
- ローフード運動 よみがえる農業/農村―その背景
- 第2章 北イタリア―トリノ・ヴェネト州・ボローニャ
- 1 アルプス(山)とパダーノ(平野)が育む芳醇な食
自治都市国家の形成と経済発展 アルプスの麓・丘陵地帯の極上食材 全世界から若者が集まる小さな田舎町・ブラ エトルリア時代から伝わるポー平原の食文化 - 2 伝統×若者―食の新たな価値創造へ
過疎地のワイナリーで景観を守る二人の若者 伝統手法によるシャンパーニュよりも上品に―プロセッコ 暮らしの質を保障するスローシティ 肥沃な土地が極上生ハムを生み出す伝統 食のテーマパークFICOと食問題を解決するボローニャの企業 障がい者雇用と廃棄食削減に挑戦する世界的シェフ 脱工業から持続可能な都市へ
- 第3章 中央イタリア
―ローマ、トスカーナ、ウンブリア州 - 1 アグリツーリズムが育む地域食と農村コミュニティ
実はローマは田園都市 素朴で等身大のアグリツーリズム トスカーナとフィレンツェ トスカーナの持続可能なアグリツーリズム トスカーナの世界最高牛―誕生秘話
無駄なく美味しく農村を守る田舎料理・リボッリータ - 2 上質の暮らしをブランディングする都市農村の戦略
下町文化あふれるトラステヴェレ ローマ発の屋内ファーマーズ・マーケット イタリアを有機農業先進国にした小さな農村・ウンブリア 異業種のつながりが地域を盛り立てる
- 第4章 南イタリア―バーリ・フォッジャ・ファザーノ
- 1 イタリアの胃袋を支える農業地帯プーリア
ギリシャ時代以来の異国支配ゆえの伝統 イタリアの胃袋を支えるオリーブの一大産地 デュラム小麦と極上のパン 日本人より生魚介を食べる唯一の地域 「最も美しい村連合」 人口二万以下のまちに四〇軒以上のレストラン ラティフォンド(大地主制度)解体の余波 アフリカからの移民受け入れをめぐる試行錯誤 - 2 ポベラッチャ(貧乏食)の知恵
粉挽き場という公共空間 一六世紀以来の石窯―藁焼きの懐かしい香り 大地に誇りを取り戻すカリスマシェフ 水車で挽き立て小麦の絶品フォッカッチャ 人間関係が広がる若手集団ヴァザップのワークショップ 「農地でどれだけ多くの関係性を築けるか」
- 第5章 島々―アグリジェント(シチリア)・サルデーニャ
- 1 多様な文化が交錯する島々
文明の十字路・属国としての島々 サルデーニャとシチリア―異なる歴史 マフィア・山賊を生み出した統治 伝統的食材の宝庫・シチリア 世界五大長寿地域サルデー
ニャの食文化 景観を公共財として保護するガラッソ法 - 2 時空を超えてよみがえる伝統食と暮らし
伝統的製法による塩づくり(トラーパニ) 女性が守るサルドの伝統的チーズ、カーチョ・カヴァッロ 一二人の若者がよみがえらせた小さな村 過疎地でたった一人始めた若者の挑戦 ITを駆使したミクロミュージアムで地域再生 シチリアの保存すべき無形資産・穀物 移民少年たちをイタリア食農文化で包摂する
- おわりに―日本は何を学ぶべきか
- 農業・農村に求められるソーシャル・イノベーション ソーシャル・イノベーションとは EUのボトムアップ型食農政策―補助から革新の支援へ イタリアから日本が学べること
- コラム パスタの種類(ロングパスタ)
- EU地理的表示(GI)とは
- 自家用魚醤コラトゥーラで地域おこし
- イタリアワインの格付け
- 進む若者移住―トリノ大学と限界集落の連携 69 EU地域開発政策―LEADERプログラム
書誌データ
- 初版刊行日2025/4/22
- 判型新書判
- ページ数288ページ
- 定価1210円(10%税込)
- ISBNコードISBN978-4-12-102853-2
書店の在庫を確認
SNS公式アカウント情報