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白川静 著
『詩経』は溌剌たる古代人の精神と豊かな生命の胎動を伝える中国最古の詩歌集である。 それにもかかわらず、儒教の聖典の一つとして特殊な解釈の上に早くから古典化し、詩歌本来の姿が見失われて久しい。この古代歌謡の世界を回復するために、その発想基盤の類似性をわが国の『万葉集』に求め、比較民俗学的な立場から、古代人の民俗と生活感情に即しつつ、哀歓をこめて歌われた民謡や貴族社会の詩のうちにある生命と感動を蘇らせる。