【試し読み】ゼッタイ! 芥川賞受賞宣言刊行記念!佐川恭一スペシャルインタビュー(前編)

(※ゲームブック体験版から飛んできたお友達へ。続きは、単行本でお楽しみください!)

佐川恭一さんの最新作にして問題作『ゼッタイ! 芥川賞受賞宣言~新感覚文豪ゲームブック~』が、2023年9月21日(木)についに発売。刊行を記念して、佐川さんに突撃インタビューを敢行しました。
稀代のカルト作家」「令和日本文学の、黒光りに輝く希望の星」との呼び声高い佐川さん。一体どんな奇人変人でいらっしゃるかと構えていたら、京大卒らしい知性に澄んだ瞳をもつ青年が、5月の鴨川デルタを吹き抜ける風のように現れて――

――インタビューを引き受けてくださり、ありがとうございます。『ゼッタイ! 芥川賞受賞宣言〜新感覚文豪ゲームブック〜』いよいよ発売ですね! まずうかがいたいのですが、どうしてゲームブックという形式で書くことになったんですか?

佐川 最初は4年ぐらい前に中央公論新社のFさんからメールをいただいて、そこから「いずれ何か一緒にやりましょう」っていう話をしてたんですね。その後も小説の感想とかたくさんいただきながら少しずつ具体的に話を進めていったんですが、最初は中短編をいくつか書いてwebに載せてもらって、それをまとめて本にするみたいな構想だったんですよ。でもそのうち、もう普通の短編集じゃなくてやりたい放題のメチャクチャな本を作った方が僕の持ち味が出るんじゃないかという話になって、打ち合わせしている中でFさんから「ゲームブックってどうですか?」って提案していただきまして。確かにそれだったらかなり自由に展開できそうだなと思って、今回の形式に決まったという感じですね。

――私もプレイさせていただきましたが、めくってもめくっても想像を超える展開......「やりたい放題のメチャクチャな本」という企ては成功していると思います! ぶっちゃけ、ご自身の経験が反映されてるエピソードってあるのでしょうか?

佐川 家で無職のままダラダラしてて、父親に刀を突き立てられるシーンは実話ですね。うちの実家、入ってすぐ左が和室なんですけど、そこに掛け軸とよくわからない刀がずっと置いてあって。なんやこの刀って思ってたんですけど、あの時に「本物やん!」ってはじめて思いました。
というのは冗談ですけど(笑)、いくつかは本当のところがあります。たとえば就活の合同説明会に行く場面で、会社の人がクイズを出してきて、正解したら「君は見込みがある」みたいなことを言って内定を匂わせてくるシーンがあるんですけど、あれは本当にありました。実際には十五か二十人ぐらいで話を聞いてて、僕と友人の二人だけが何かの問題に正解したんですよ。そしたら全体説明が終わった後で二人だけ手招きされて、連絡先渡されてみたいなことがあって。結局連絡はしなかったんですけど、あれ何だったのかなって今でも不思議です。

――例のクイズですね(笑)。序盤で、ある選択肢を選ばないと見られないクイズです。小説はふつう、ストーリーラインが一本ですが、ゲームブックはAという選択肢もBという選択肢もどちらも書けます。ゲームブック形式ならではのご苦労はありましたか?

佐川 確かにゲームブック形式でものを書くのは初めてで、ちゃんと成立させられるかという不安はありました。ただ、小さい頃にドラゴンクエスト4のゲームブックにめちゃくちゃハマった記憶はあって、自分でそういうものが作れたら面白いなとも思いましたね。そうやって書いているうちに、普通の小説はストーリーラインが一本といえば一本なんですけど、書き手はその都度展開を選択していて、完成品になるまでにいくつもの可能性が捨てられているものだということも意識されてきて。そういう可能性をたくさん書き込めるというところに、楽しさもすごく感じました。ゲームブックというと小説とは別のものという感じを受けるかもしれませんが、そうでもないなというのが書いてみての印象です。

※続きは、来週公開の後篇へ!

【試し読み】ゼッタイ! 芥川賞受賞宣言

Synopsisあらすじ

君は「ゲームブック」を知っているか――

ある世代以上の諸姉諸兄には懐かしく、ナウなヤングの目には新鮮に映るであろう一冊の本が誕生する。



2023年9月21日発売、鬼才・佐川恭一が贈る「ゼッタイ! 芥川賞受賞宣言~新感覚文豪ゲームブック~」。



ゲームブックは1980年代に一世を風靡し、ファミコンの隆盛とともに衰退した。

いまさらゲームブックなんて時代錯誤だ……さて、果たしてそうであろうか?

ならば、お試しいただきたい。諸姉諸兄にも、ナウなヤングにも、ソシャゲ重課金勢にも。



――そう、主人公は、君だ!



(毎週木曜日更新)

Profile著者紹介

佐川恭一(さがわ・きょういち)

1985年、滋賀県生まれ。京都大学文学部卒業。2011年「終わりなき不在」で第3回日本文学館出版大賞ノベル部門を受賞。19年「踊る阿呆」で第2回阿波しらさぎ文学賞を受賞。著書に『シン・サークルクラッシャー麻紀』『清朝時代にタイムスリップしたので科挙ガチってみた』などがある。

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