- 2018 08/06
- 私の好きな中公新書3冊
私は日々、あっちこっちに妄想をめぐらし、その妄想を作品や記事など、目に見える形にしながら生活している。そんな中で、特に仕事とは関係なく私が妄想をこねくりまわしがちな事象の分野が、自然科学である。宇宙はどうなっているかとか、人間はこの先どうなるのだろうとか、そもそも自分とはいったい何だとか、まるで修学旅行の旅先で友人と枕を並べながら語り合いつつ答えが出ない、あの感覚を今だにずっと反芻しているのである。
その妄想を新たに充電しチューンナップしたいとき、自分の持つ今までの常識をひっくり返してくれそうな本に惹かれる。新しい発見があって後、またたくましい妄想を開始できる気がするのである。
『すごい進化』は、一見すると不合理に見えるさまざまな昆虫のふるまいを丁寧に紹介しつつ、進化の様々な側面を解説してくれる。著者の筆致は、時に震えるほどの感動を呼び起こす。対象は小さな昆虫だが、それら事象を通して、生物、そして我々の来し方行く末にまで思いを馳せることができたように思う。
“すごい”繋がりで『植物はすごい』。自分で移動もできず、声も表情もない植物がどれほど動物の真似できないようなすごい能力を持つのか、たくさんの事象を例にわかりやすく展開していく。「なぜ植物がこのような性質に至ったか」を考えることで、これもまた人間社会他、広い範囲にまで思考のタネを撒いてくれるかのようだ。
『ゾウの時間 ネズミの時間』とは20代の頃に出会い、その余韻が今だに尾を引いている。哺乳類の心臓の鼓動は生涯で20億回――これを読んで以来、どうやって鼓動の速さを抑えられるか、しばしば考えていた。そんなある日、仕事で編み物をしていたとき、自分の呼吸がゆっくりなことに気がついた。物作りで寿命がのばせるのでは?!と心の中で新説を唱えたのが数年前。もしかしたら自分が今こんな仕事をしているのも、この本のおかげかもしれない。