- 2019 02/14
- 私の好きな中公新書3冊
黒田龍之助『外国語を学ぶための言語学の考え方』
青柳いづみこ『ショパン・コンクール 最高峰の舞台を読み解く』
横手慎二『スターリン 「非道の独裁者」の実像』
今から40年前。昔懐かしい「共通一次試験」に挑んだ初代の受験生だった私は、本番を間近に控え、高校そばの書店の新書コーナーの前に立ち、「大学に入ったらこういう難しい本を読むのかなあ?」と、期待と不安がないまぜになったような気持ちに浸った。当時は新書といえば中公か岩波で、どちらも日本の知の支柱というイメージだった。そんな日々以来、随分と中公新書のお世話になってきた。そして今、「私の好きな3冊」を選べることには感慨を覚えずにはいられない。
黒田龍之助『外国語を学ぶための言語学の考え方』は、ポリグロットにして、著作の多い言語学者の作品。どの本を読んでも、難解な内容を平易な言葉遣いで理解させてくれる素晴らしい能力の持ち主だと思う。実利面にとらわれない外国語学習そのものの楽しさを説く著者による言語学入門書も魅力的である。
青柳いづみこ『ショパン・コンクール』。Chopinがなぜチョピンでなくショパンと読めるのかがわかるようになったのは大学でフランス語の授業をとったとき。ショパン・コンクールという権威ある大会が5年に一度しか開催されないとは、本書を読むまで知らなかった。日本人がなかなか優勝できない理由が、小柄というフィジカル面、指導者の教えの枠を超えられない応用力の不足という指摘はサッカーにも通じるものがある。4年に一度のワールドカップを制するのが先か、ショパン・コンクールで優勝するのが先か?
横手慎二『スターリン』。20世紀ポルトガルにはサラザールという、スターリンとは異なるタイプの独裁者がいた。サラザールを研究対象とする私は独裁者に憧れがあるのだろうか。そんなことはないと思うが、やはり無視できずに読んだ作品。サラザール時代を懐かしむポルトガル人がいることを思えば、スターリンの評価が今も分れるというのは理解できる。独裁者と偉大な政治家の境界線はどこで引けばよいのだろう?