- 2016 10/20
- 私の好きな中公新書3冊
白幡洋三郎『旅行ノススメ 昭和が生んだ庶民の「新文化」』
森正人『四国遍路 八八ヶ所巡礼の歴史と文化』
廣野由美子『批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義』
中公新書はちょっぴりマニアックな分野の入門書や文化史に秀でているという印象があります。
『旅行ノススメ』は旅行史という、ありそうでなかった領域に踏み込んだ好著。修学旅行のルーツから団体旅行や海外旅行まで。新婚旅行は南へ、失恋の旅は北へ向かう、などの考察も楽しく、おおいに蒙を啓かれました。
同じような意味でおもしろかったのが、『四国遍路』です。ストイックなイメージがある一方、実際にはレジャー感覚で続いてきた四国遍路。近世以降のガイドブックや交通網の発達が遍路に与えた影響などを幅広く考察。批評的な目配りも効いた、秀逸な文化論です。
『批評理論入門』は、メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』という19世紀のイギリス文学を題材に、小説のなりたち方から文学批評の基礎理論まで学べちゃう奇跡のような本。『フランケンシュタイン』自体、さまざまな企みに満ちた異色のテキストですが、小説ってこういう風に読むんだ、という知的な興奮が味わえます。