2022 02/10
編集部だより

源頼朝の後半生――「鎌倉殿の13人」雑感

上段はNHK大河ドラマ・ガイド『鎌倉殿の13人 前編』(NHK出版)、下段は元木泰雄著『源頼朝 武家政治の創始者』、岩田慎平著『北条義時 鎌倉殿を補佐した二代目執権』、坂井孝一著『承久の乱 真の「武者の世」を告げる大乱』(いずれも中公新書)

 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が鳴り物入りで始まった。期待に違わぬ上々の滑り出し、と心から拍手を送りたい(第5回まで視聴)。
 セリフも演技も、軽快でテンポがいい。SNSなどでの評判もいいようである。

 主役の北条義時を演じる小栗旬ももちろんいいのだけれど、何と言っても、大泉洋が源頼朝、小池栄子が北条政子という配役が絶妙。
 小学校時代に見た「草燃える」(1979年)では石坂浩二と岩下志麻が頼朝・政子夫妻を演じていて、いかにも大河らしく重厚で印象深かったのだが、かといって今回の二人に違和感はない。いや、むしろ新鮮で面白い。

 ところで源頼朝の年齢に着目してみたい。平家追討の兵を挙げたとき、頼朝は34歳(数え年)だった。平治の乱勃発に際し、13歳で初陣を果たすも敗北を喫し、その翌年に当時は辺境の伊豆に流されてから20年が過ぎていた。
 元服から20年余りという年頃は、現代の感覚なら40代後半ぐらいなのかもしれない。遅咲きもいいところである。

 長い流人生活のなかで、頼朝は何を考えていたのだろう。自分の人生を、ほとんど諦めていたのではないか――そんなふうに思えてならない。
 人生100年時代の現在とは訳が違う。「いつの日か必ず再起し、亡き父の仇、平清盛の首を取る!」などという大それた願望を持ち続けるには、20年という歳月は長すぎると思うのだ。

 だが、時の勢いは頼朝に味方した。挙兵のチャンスが到来するや、頼朝を棟梁と仰ぐ鎌倉武士はわずか10年で関東を平定し、壇ノ浦の戦いで平家を滅ぼし、さらには奥州藤原氏をも葬り去る。
 元木泰雄氏(『源頼朝』著者)の表現を借りるなら、まさに「流人の奇跡」である。頼朝は44歳になっていた。

 残念なことだが、大泉頼朝はその先、ドラマの舞台から途中退場することになる。史実では53歳で頼朝が急逝するからだ。挙兵から死去までの濃密な19年(無為の流人時代の長さとほぼ同じだ)がドラマでどう描かれるか、ますます目が離せない。
 筆者の年齢は現在、頼朝の享年と同じ53歳。勝手な思い入れと言われるかもしれないけれど、頼朝がたどった軌跡に我が身を重ねてしまうような気持ちもあるのだ。(波)