2021 08/27
特別企画

『すごい植物最強図鑑』試し読み②

このたび、中公新書のロングセラー『植物はすごい』から児童書が生まれました。
『すごい植物最強図鑑』(田中修 監修/角愼作・上田惣子 絵)です。その中身を少しだけお目にかけます。

身近なみどりに、ふしぎがいっぱい! 今回は、学校の授業で扱う植物の雑学を3つ、ご紹介します。

アサガオのツルは超高性能なシステム搭載

アサガオの生き残り戦略は、ツル。ただ上だけを見てむやみに伸びるのではなく、くるくる回転して巻き付くものを探し、まわりを巻きこんで足場を固めながら上を目指します。

ツルには、触ると刺激を感じる接触センサーのようなものが付いていて、接触すると触れた面は太く短くなり、反対面が伸びます。ツルの両側面の長さに差がでることで、接触した面を内側にして巻きこむことができるのです。

規則正しい回転も精密機械並。上から見ると必ず反時計回りで約1時間に1回転します。うまく巻き付いてもズルズル落ちてしまえば台無しですが、その対応策が、ツルに生えている無数の細く短い毛。下向きに生えていて、ストッパーの役目を果たしています。さらに、上に伸びる力ちからによって、強く巻き付くことができるのもポイントです。

トマトは香りを発散させ仲間に危険を知らせる

植物が出す香りというと、虫や動物を誘ったり、反対に追い払ったりするためのものが多いのですが、トマトが出す香りは、仲間に危険を知らせるためのもの。この成分が「ヘキセノール」です。

トマトがこの香りを使うシステムはちょっと複雑です。まず、天敵のハスモンヨトウというガの幼虫が、あるトマトの葉っぱを食べます。すると、そのトマトはかじられた傷のまわりから香りを発散させ、まわりの仲間に危険を知らせます。危険を察知した仲間はその香りを葉に吸収し、蓄えます。そしてその成分を材料にして、ハスモンヨトウの幼虫の成長を妨げる物質をつくり出すのです。幼虫にしてみたら、食べても成長につながらない葉っぱなど食べたくはありません。その結果、幼虫を遠ざけることができるのです。

相手を直接攻撃せず仲間を守る。とても賢い平和的なシステムですね。

ホウセンカの実に触れるとすごい勢いでタネが弾け飛ぶ

ホウセンカの英語名は、触らないでという意味の「タッチ・ミー・ノット」。さらに、属名のインパチエンスには「もう辛抱しきれない」という意味が含まれます。

この名前の理由は、ホウセンカの熟した実を触ってみればわかります。キレた人が怒りを爆発させるように、タネが四方八方へ飛び散るのです。

でも安心してください。タネが飛び散るのはキレたからではありません。

そのまま下に落ちて兄弟が同じ場所で芽を出せば、お互いをつぶし合ってしまう可能性も大。ホウセンカはそれを避けるため、あえて別方向に飛び散らそうと考えたのです。

ちなみに、タネの数は10~20個で、飛び散る距離は最大1メートル近く。タネは直径2ミリほどなので、人間に換算すると、約750メートルもジャンプしたことに。オリンピックの走り幅跳なら、金メダルですね。