2020 12/10
私の好きな中公新書3冊

現在を知るために、大局的な流れをつかむ/TVOD

逢坂巌『日本政治とメディア テレビの登場からネット時代まで』
猪木武徳『戦後世界経済史 自由と平等の視点から』
筒井清忠『戦前日本のポピュリズム 日米戦争への道』

コメカ こんにちは、TVODコメカです。

パンス TVODパンスです。

コメカ 我々は二人でTVODと名乗って活動してまして、普段はサブカルチャーや社会についての批評をやったりしております。今回は「私の好きな中公新書3冊」に登場させていただきました。で、ぼくらが選んだ3冊のテーマが。

パンス 「現在を知るために、大局的な流れをつかむ」。サブカルチャーなどを語るにしても、その背景にある政治や社会の動きを知っておくのが大切だと思っているので、中公新書の数々にはいつもお世話になってます!

コメカ 新書というコンパクトな形式のなかに大きな歴史の流れが整理されているというのは、自分の頭のなかに地図を描くときにもとても助けになってくれるよね。ではさっそく1冊目のタイトル紹介をお願いします。

パンス まずは『日本政治とメディア』から。戦後日本の政治史って、総理大臣もコロコロ変わるし、学ぶの大変って感じするかもしれないけど、個人的にこの本がもっとも入りやすいかもと思ってます。なぜなら、メディアの移り変わりを軸に語っているから。

コメカ 実際問題「戦後」って、テレビなりネットなりの情報メディアが、人々の政治判断に対してそれまでに増して強力に作用する時代としてあったわけだもんね。

パンス そう。とくに戦後70数年のなかで、テレビの果たした役割は大きいね。テレビと政治家がそれぞれの思惑のもと立ち回るなかで、政治自体が展開しているようなところがある。

コメカ ぼくたち自身そういう環境のなかで育ってきてるから、メディアを論点にした歴史記述というのは理解しやすいよね。では次の1冊、『戦後世界経済史』。第二次世界大戦後から20世紀末までの経済史を、大づかみに知ることができます。

パンス とくに第五章、石油危機とスタグフレーションの70年代あたりからの動きが、現在の世界に直結するね。我々の書籍『ポスト・サブカル焼け跡派』で語ってる出発点もこの時代。

コメカ 各時代の経済状況・構造って、特にぼくらが普段やっているような文化批評的な語りでは見落とされがちだったり、あまりにも簡略化され過ぎていたりする。そこをきちんと学び直す糸口として、本書は機能してくれるなと思いました。では、最後の1冊を。

パンス 先の2冊は第二次世界大戦後を捉えたものですが、最後は戦前を。『戦前日本のポピュリズム』。1905年の「日比谷焼き打ち事件」から太平洋戦争に至るまでの、大衆と政治、それをつなぐメディアの関係性について、数々の事件をもとに分析してます。「戦争」が、上からのプロパガンダだけでなく、大衆のうねりも含んだ複雑な状況から発生していくさまを丁寧に描いてる。

コメカ 「かつてあった流れ」を具体的に知っておくことが、「これからの流れ」に臨むときにとても大切だと思うな。ぼくら自身も例外じゃないんですが、「縦軸の歴史」に対する理解力というのが、いまの時代を生きる人々の間で衰弱していっているように感じています。今回選んだ三冊のような、過去から現在に至る大局的な流れを教えてくれる書籍は、その状況への処方箋になり得るのではないでしょうか。中公新書には歴史についての最良のテキストが他にも沢山ありますから、ぼくらも更に学んでいきたいと思っています!

TVOD(てぃーゔぃーおーでぃー)

コメカ(早春書店店主)とパンスによるテキストユニット。「サブカルチャーと社会・政治を同時に語る」活動を、様々な媒体にて展開中。TVODとしての単著に『ポスト・サブカル焼け跡派』(百万年書房)がある。
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