- 2018 06/06
- 私の好きな中公新書3冊
中西寛『国際政治とは何か 地球社会における人間と秩序』
大泉啓一郎『老いてゆくアジア 繁栄の構図が変わるとき』
白石隆/ハウ・カロライン『中国は東アジアをどう変えるか 21世紀の新地域システム』
世の中の色々なことに関心はありながら、元来が横着で、いきなりごつい専門書には手を出しにくいという人間にとって、新書はその道の学者や専門家が、長い時間をかけて研究した成果をぎゅっと凝縮し分かりやすく教えてくれる、夢のようなアイテムである。ネットやデジタルの情報と違い、長い時間がたっても、いつでもふと手にとって読み返せる点もいい。
『国際政治とは何か』。"国際政治"でもなく"国際政治論"でもなく、このタイトルなのは意味があるのではと、久しぶりに読み返して感じた。国際政治の構造のみならず、人々がそれをどのように認識し、解釈し、関わろうとしてきたかが、歴史、思想、哲学的背景から述べられていく(もしかしたら、単に著者の師である高坂正堯の中公新書『国際政治』と名前が被らないようにしただけかもしれないが。こちらも名著)。外交や安全保障政策について、「右か左か」というような単純化された議論が跋扈する中、広く読まれてほしい本である。
『老いてゆくアジア』。少子高齢化は、言うまでもなく日本にとって非常に重要で深刻な問題だが、高度成長で活気付く中国にとっても重要で深刻な問題である。いや、実は多くのアジア諸国にとって重要で深刻な問題なのである。高齢化の問題について、地域を対象とした分析を加えることにより、日本人が見落としがちな課題を明らかにし、多くの示唆を与えてくれる。
『中国は東アジアをどう変えるか』。日本国内には中国に関する書籍や言説が溢れているが、中国が東アジア諸国とどのような関係を築き、相互に影響を与えてきたかを冷静に分析するものは多くない。本書は、中国が東アジア諸国や地域秩序に与えた影響はもちろん、経済交流や華人の移動が「中国」およびチャイニーズの形成にどう影響を与えたかなども記述されており、中国の歴史や文化に関心がある人にもお薦めである。