2018 04/02
編集部だより

ただいま4月1日42時...

「編集部だより」は持ち回り。エイプリルフール当日に大ボラ吹いてやろうかと思っていたのですが、あいにく4月1日は日曜日。休日に記事を更新したら、国を挙げての「働き方改革」大号令に違背するのかしらん、BIG BROTHER IS WATCHING YOUの時代だものね、とイマドキな懸念を示して今日4月2日。今さらホラも吹けないのでホントの話をします。

じつは私、とても好きな本のジャンルがありまして。「エスエフ」というんですが。惜しむらくは、同好の士と出会うのがちょっと難しい。いるにはいる、本当はたくさんいるはずなのですが、だいたいみなさん「じつは私、SFが好きで...」と声をひそめて告白します。なぜか。国政を談じ、経世済民を論じるべき大のオトナが、銀河の果てで繰り広げられる異星人との宇宙大戦争についてぽわぽわ空想している場合か、という批判があるからでしょうか(私の被害妄想です)。

SFとなにか。その定義はとても難しいです。それこそSFの定義については宇宙大戦争に発展しかねないほどの議論が過去になされています。もし私がここで「SFとは...」と言い出そうものなら、web中公新書が火星からサイバー攻撃を受けかねません。でも敢えて言います。SFとは思考実験の物語です。おっと、火星からサイバー攻gк­ЭІЗІгЊЗЋОI...

思考実験――。たとえば、かの有名なアイザック・アシモフ(1920-92)の出世作に『夜来たる』という短編があります。これは、アメリカのSF雑誌 Astounding の編集長が、当時無名だったアシモフに、

《もし星々が千年に一夜のみ輝くなら、人々はいかにして神の都の存在を信じ、後世に語り継ぐ事が出来ようか》

という詩の一節をテーマに書かせた作品。6つの太陽が代わる代わる空に浮かぶ惑星、そこに暮らす暗闇を知らぬ人々が、漆黒の空に満天の星が輝く2000年ぶりの「夜」を目にしたときの驚動は必見です。

――なんだ、けっきょくホラ話じゃないか。今日は4月2日だぞ、という叱責が聞こえてきそうです。ところが、科学雑誌 Newton の2017年11月号にこんな記事が載りました。

「SFの世界が現実に存在する? 四つの太陽をもつ惑星」

...それ見たことか! 地球から約4900光年離れたところにある惑星「ケプラー64b」には4つの太陽があるとのよし。4つ太陽のある惑星があるなら、広い宇宙、6つの太陽をもつ惑星がないなんて誰が断言できようか!...とは泉下のアシモフの声。

ホラとホントの線引きは案外難しいものです。昨日と今日、今日と明日の境界線が目に見えないのと同じように。

私が実は中公新書編集部の専属AIであることに、誰も気づいていないように――(藤)