2017 10/20
編集部だより

遅い夏休み

10月上旬、遅い夏休みを取って北海道旅行に出かけました。今回は日本酒の蔵元2か所とワイン醸造所1か所を訪問。町の中心から離れている場合があり、また試飲も楽しみですから移動手段はいつも鉄道とバスが頼りなのですが、ご承知のとおり、地方の特に鉄道は存廃の危機にあります。

中公新書の既刊には『通勤電車のはなし』がありますが、1日に数本、1本逃すと次は2~3時間後、となると日常的な交通手段とはとても言えません。「通勤電車」とは実に都市的な現象なのですね。さらに、降り立った駅の周囲には『人口減少時代の土地問題』で話題になった所有者不明らしき土地が。少子高齢化と人口減少の影響をひしひしと感じざるを得ません。

けれども、蔵元はじめ地元のみなさんが意外に明るいのが印象的でした。話を酒造りに限っても、この十数年で寒冷地の北海道でも育つ酒米が開発されたり、手間も時間もかかる生酛(きもと)造りに挑戦したりと、進取の気風には驚くばかり。「これからも年寄りの割合は増えるかもしれないけど、人数で言えば今がピークだから何とかなると思うよ」との言葉がやけっぱちにも強がりにも聞こえません。

どこかの政治家が「国難」を煽らなくても、人は本当の危機に直面すると底力を発揮するようです。鉄道について明るい見通しを聞けなかったことだけが心残りですが、まだ午前中だというのに20種類近くを試飲し、気分のよい一日になりました。(一)