2017 02/17
特別企画

イラストレーター ももろさん特別インタビュー

『ウニはすごい バッタもすごい』(本川達雄著)の帯イラストと、同じ著者のロング&ベストセラー『ゾウの時間 ネズミの時間』の全面帯イラストを描いてくださったイラストレーターのももろさん。これがあの中公新書!? と驚きの声もあちらこちらで。ふたつの帯の誕生秘話などを、ももろさんに聞いてみました。

――『ゾウの時間 ネズミの時間』の発売は四半世紀前の1992年。当時ももろさんは小学2年生ですね。どんな子ども時代だったんですか?

ももろ:犬、金魚、インコにとどまらず捕まえたカエルやイモリなども飼っていて、とにかく動物が大好きでした。小学生の頃は犬と一緒にお風呂に入ったり犬小屋で寝てみようと試みたこともあります(犬に嫌がられましたが……!)。

一番好きだった本は買ってもらった動物図鑑で、ボロボロになるまで読みましたし今も手元に置いている宝物です。
動物だけでなく本も好きで、親からよく本を手渡されたり、親の本棚の本を読んだりもしていました。『ゾウの時間 ネズミの時間』も当時、親から手渡された本の一つです。動物それぞれに流れる時間が違うという視点が新鮮で、生き物を見る目を変えてくれた本でした。

新書は難しそうだなと思いましたが、動物好きの私にとって「ゾウ、ネズミ」というタイトルは手に取りやすかった理由の一つかもしれません。中公新書で言えば、『イヌ・ネコ・ネズミ』(戸川幸夫著、1991年刊行、品切れ)も父が勧めてくれた本で、今でも本棚にあります。

動物好きが昂じて、家の中は動物グッズがたくさん!

――いまはイラストレーターとして大活躍ですね。

ももろ:動物のイラストをメインにお仕事させていただいています。具体的には絵本を描いたり、雑貨のデザイン、書籍や広告関係、保育系の雑誌などにイラストを描くことが多いですね。

動物の無邪気な動きや表情、ユニークなフォルムが好きで描いていて楽しいです。

動物のイラストを描く際にひとつ心掛けていることがあって、「ここが好き」という私なりのポイントをイラストであらわしたいといつも意識しています。

イヌの後頭部のふかふかな毛や耳のつけねのやわらかな毛とか、クマの手の甲の少し反ったラインとか、ライオンのあごヒゲ(メスにも生えてるんですよ!)とか――そういう、こまかいけれどつい心惹かれてしまうポイントが私にはあって、そこを描くのが好きなんです。

イラストを描いているももろさん
表情豊かなオリジナルキャラクター

――では、『ゾウの時間 ネズミの時間』や『ウニはすごい バッタもすごい』の帯イラストにも、ももろさんの「好きなポイント」が?

ももろ:ゾウの頭、よく見てみてください、毛が生えてるでしょう? ゾウの頭にはけっこう硬い毛が生えていて、それを描き込みました。あとはネズミの鼻先ですね、匂いを嗅ごうとしてネズミが鼻先をヒクヒクさせているのがかわいくって。

『ウニはすごい バッタもすごい』のほうだと、私のポイントはタコの腕ですね。タコって、腕を振り回すように泳ぐときがあるんです。ちょっと南欧風のこの帯のタコも、そのイメージで腕を振り上げさせました。

ゾウの毛、ネズミの鼻先、タコの腕!

――帯のイラストを描くに当たって、なにか心掛けたことはありますか?

ももろ:今回のお仕事のお話があったとき、『ゾウの時間 ネズミの時間』をあらためて読み返したんです。それで、みんな自分の時計を持っているから考え方や感覚は違って当たり前なんだということに再度気づかされ、他者に対して、万物に対して優しい気持ちになれる本だと思いました。

そこで、「みんな自分の時計をそれぞれに持っているんだよ、だけどネズミとゾウが対等な目線で、お互いの時間を尊重しているんだよ」ということを表現したイラストにしました。

『ウニはすごい バッタもすごい』の帯については、高校時代の生物のノートを見返しました。この本は棘皮動物あたりの話題も満載と伺っていたので、進化の系統図を見直したり。

実物に忠実なところはしっかり描きつつ、学術挿絵というよりはそれぞれの個性的で愛嬌のあるフォルム、可愛いカラーリングを強調しています。そうすることで、この分野に触れてこなかった人にも手に取りやすくなるといいなと思いながら描きました。

――ももろさんにとって、生き物の魅力はどのへんにあるのでしょう?

ももろ:さっきお話ししたような動物のディテールももちろん愛おしいのですが、動物そのものでも、デザインでも、「動物」が目に留まるだけでなんとなくほっとしてしまうんですよね。そこが最大の魅力だと思います。なぜか癒されてしまうんです。

今は生地デザインやパッケージデザインのお仕事もしているのですが、何かとストレスを感じることもある日常の中で、目にした時ほっとできるスポットを作れたらと思いながら制作しています。

2016年冬に伊豆テディベアミュージアムで開催された、ぬいぐるみ作家の原優子さんとのコラボレーションイベント

――ももろさんは、これから、どういったお仕事をしていくのですか?

ももろ:今回のように本に関わるお仕事ができるのはとても幸せです。特に好きな本に関われたので本当に嬉しかったです。また機会があれば是非描かせてください。

今とりくんでいるのは絵本制作ですが、その中で楽しい世界を作りあげていくことがこれからの目標です。

それと並行して、動物の持つ可愛くて楽しい、ユーモアのある雰囲気をいろいろな媒体で形にして、ワクワクするモノづくりや広告のお手伝いをさせてもらえたらと思っています。

ももろ

1984年神奈川県生まれ。絵本作家、イラストレーター。動物イラストを得意とし、絵本作品に『キッキとネネのかくれんぼ』(2015年)、『ハッピーとラッキーの動物園』(2016年、いずれも教育画劇)、『サンタさん まだかな』(2016年、あかね書房)があるほか、雑貨やステーショナリーのデザイン、教科書や保育教材の挿絵などを多数手がける。2013年、絵本雑誌MOE紙上コンテスト2013年8月号トップ賞受賞。2016年冬には、『サンタさん まだかな』出版記念展として、伊豆テディベアミュージアムで、ぬいぐるみ作家の原優子氏とのコラボレーションイベントが開催された。

ももろさんのHP http://cowrest.web.fc2.com/