2016 11/04
編集部だより

同世代の訃報

25年来の付き合いがあったライターさんが9月17日に亡くなった。

衿野未矢さん(本名・櫻井規枝さん)、享年54。若すぎる死だった。10月半ばにご主人がブログにアップしたことで知った。

女性誌、ファション誌、論壇誌、新書と、僕が編集部を異動しても付き合いは変わらず、近況を語り合う仲だった。彼女もまたライターを続けながらも、大学講師、漫画原作者、作家と多くの顔を持っていた。走ることに目覚め数年前には東京マラソンを完走していた。

8月に病が末期だとのメールをもらい、新潟に見舞いに行った。栄養摂取が難しく、痩せ細っていた。だが、笑いを交えながら快活に話はできた。それは、彼女を通して自分自身の四半世紀を振り返る1時間半でもあった。

「レディス・コミック」を大量に買いに行かされ、性描写を検証させられたこと、無名だった村上隆らの一大イベント「新宿少年アート」を取材し、ゴールデン街で酔いつぶれていたこと、皇太子や雅子さまの"おかっけ"取材で東京中を奔走したこと、狂牛病問題が世間を騒がすなか松阪牛を食べ歩いたこと・・・・・・。そして異性の問題が起こると高円寺や阿佐ヶ谷で報告し合い、慰め合い・・・・・・いや慰めてもらったこと。

「あららら、またそんなことしちゃったの」と、いつも笑顔で聞いてくれた彼女はもういない。4歳上の彼女は僕にとっては姉代わりだった。

今度の12月で僕は半世紀を生きることになる。ここ数年、同世代の訃報を聞くようになってきた。死んだらどうなるのか――。4、5年前には考えたこともなかったことが、ふと頭をよぎるようになってきた。

無なのか、魂は残るのか。彼女がまたアドバイスをしてくれるのではと思ってしまう。

衿野さん、心からご冥福をお祈りします。(白)