2016 10/21
著者に聞く

『カラー版 地図と愉しむ東京歴史散歩 地下の秘密篇』/竹内正浩インタビュー

『地図と愉しむ東京歴史散歩』シリーズが人気の竹内正浩さん。その最新作は「地下の秘密篇」です。東京の地下にはいかなる世界が広がっているのか――。本書執筆の裏側などについてお話をうかがった。

――まず、本書を執筆した動機についてお教えください。

竹内:これまで『地図と愉しむ東京歴史散歩』を4冊刊行してきましたが、手つかずのテーマが、「地下」でした。地下鉄や地下街などを通じて身近な存在にも拘わらず、面白さがあまり知られているとは言いがたい「地下」について書いてみようと思いました。

――それでは、これまでの4冊ととくにどのような点が違うのでしょうか。

竹内:これまでは、ほとんど旧版地図と最新地図との違いだけで紙面を構成していましたが、今回は「地下」という特殊な性格上、東京の地下鉄について、新たに断面図を作成しました。非常に各線の特徴がよくわかるものになったと思います。また、地下壕の一部は、貴重な図面を引用しています。

――既刊とは違った御苦労もあったのでしょうね。

竹内:「地下鉄」の記述には苦労しました。どうすれば、面白い点や興味深い点をわかりやすく伝えられるのだろうかと悩みました。実を言えば、『地下の秘密篇』の方が、昨年出版した『お屋敷のすべて篇』より早く刊行する予定でした。

ところが、文章をまとめるのに苦しみ、遅くなってしまいました。本書の執筆時のことを思い出そうとしても、「地下鉄」の章を書きあぐねた記憶しかないといってもいいほどです。「地下」には魔物が棲んでいると確信しました。

――本書を読み終えた読者におすすめの本や映画としてどんなものがありますか?

竹内:「地下壕」の章に関連しますが、最近刊行された『昭和天皇実録 第九』には、大戦末期の息づまる日々が克明に記録されており、一読されてはいかがでしょうか。併せて、昭和42年(1967)に公開された『日本のいちばん長い日』もおすすめします。なんとこの映画、昭和天皇も昭和42年暮れに吹上御所で観覧しています。

――最後に読者へのメッセージを一言いただけますか。

竹内:遠くに行くばかりが旅ではありません。見なれた場所でも、新たな視点を導入することで、まったく別の風景が見えてきます。『地図と愉しむ東京歴史散歩』シリーズが「都心」に拘るのは、そういう理由もあります。

――ありがとうございました。

竹内正浩(たけうち・まさひろ)

1963年、愛知県生まれ。文筆家。1985年、北海道大学卒業。地図や近現代史研究をライフワークとする。近著に『水系と3Dイラストでたどる東京地形散歩』(宝島社)。
著書『カラー版 地図と愉しむ東京歴史散歩』『同 都心の謎篇』『同 地形篇』『同 お屋敷のすべて篇』(すべて中公新書)、『地形で謎解き!「東海道本線」の秘密』(中央公論新社)などがある。2016年秋よりよみうりカルチャーセンター恵比寿校にて都心のお屋敷講座を開講。