2016 10/27
私の好きな中公新書3冊

ものの見方を学ぶこと/速水健朗

平本一雄『臨海副都心物語 「お台場」をめぐる政治経済力学』
廣野由美子『批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義』
八代尚宏『新自由主義の復権 日本経済はなぜ停滞しているのか』

この3冊は必要なくとも、しばしば読み返す本だ。

密集都市東京の都心にぽかんと生まれた空き地お台場の都市計画が、どのように進められたかについて書かれた『臨海副都心物語』。マンハッタンを望むレストランという一枚のイラストレーションをきっかけに、ひとつの街がつくられていく過程は刺激的。お台場は都市計画の失敗事例として、「悪い」開発の代表と捉えられがちだが、そこは違うと反論したい。

『批評理論入門』は、『フランケンシュタイン』というポピュラーな物語を題材に無数の批評手法が解説される1冊。『フランケンシュタイン』に登場する「悪」の人造人間とフランス革命のつながりを示すといった読み解き方などは、これだけでスリリング。部分的にも読み返せる本。

『新自由主義の復権』では、現代の「諸悪」の根本のように言われる「新自由主義」がいかに誤解されているかが説かれ、有用性について語られる。悪く見られているものでも、光を当ててみればそこに何らかの理由や意義がある。そういったものの見方、本の書き方は、物書き(新書ライターを自認している)である自分のある種の手癖になっている。それは、読んできた本から自然と身につけたもののようだ。

速水健朗(はやみず・けんろう)

1973年石川県生まれ。ライター。著書に『1995年』(ちくま新書)、『東京β』(筑摩書房)、『ラーメンと愛国』(講談社現代新書)、『フード左翼とフード右翼』『東京どこに住む?』(ともに朝日新書)など多数。