安田峰俊 著
ダライ・ラマ14世の“Xデイ” / 韓流ムービーと朝鮮族差別 / ウイグル族と自民党 / チンギス・ハン争奪戦 / 清朝貴族の末裔の満族美人女優 / 愛国ブームで大儲けのチワン族社長 / 漢服ブームと反日動画 / 客家と陰謀論 / 福州人と対日インテリジェンス / 中国共産党の対沖縄工作……。中国問題を知るカギは「民族」にある。中国は漢族だけの国ではなく、56の民族で構成される多民族国家だ。さらに漢族の内部にも、客家人、広東人、福州人、潮州人と、文化や言語を異にするさまざまな集団が存在する。彼らは現代中国の政治・軍事・経済・社会・ポップカルチャーの多様な面で顔を出し、日本社会にも大きな影響を与えている。他方、漢族の同化圧力のもと、彼らの一部は苛烈な迫害に晒されてもいる。「中華民族の偉大なる復興」を旗印とする習近平政権は、彼らをどこに導くのか?民族は、中国の行動原理を読み解く最大の鍵であり、無数の不都合な真実をはらむ暗部でもある。現代日本の中国報道を牽引する大宅壮一ノンフィクション賞受賞作家が、中国の無数の「民族」たちの喜怒哀楽を描き、帝国化する大国の実相をえぐりだす。■目次はじめに中国人の身分証 少数民族問題 中国理解の宝刀第1章 チベット族――ダライ・ラマ14世の「Xデイ」の後は?ニセ活仏の仏教ビジネスチベット亡命政権を騙る反抗の歴史中国共産党の転生ハンドリング「流転の活仏」カルマパ17世暗転パンチェン・ラマの悲劇「月と太陽」をつかむ中国共産党第2章 回族――「最初の少数民族」への同化政策蘭州ラーメンブームウイグル族と間違えられるが存在感ある「定義困難な民族」漢・回の共存と反目の歴史中国共産党の「最初の少数民族」回族の成功者とアラビア語通訳習近平体制下で圧迫されるイスラム文化「東方の小メッカ」の受難第3章 ウイグル族――国内外の政治に翻弄される「ジェノサイド」美食、モデル、国会議員シルクロードの「西域」が「新疆」になるまで自治と抑圧のはざまで文革後、ひととき得た「自由」「テロとの戦い」が招いた弾圧経済発展、差別、大規模騒乱ウルムチ騒乱の深い闇収容所、デジタル監視、難民化ネット右翼、自民党とウイグル民族主義運動「新冷戦」のカードにされる強者に利用され続ける悲劇第4章 朝鮮族――中国・韓国・北朝鮮のあいだのダイナミズム人口流出海外最大の朝鮮民族の集団朝鮮半島と中国の往来満洲国崩壊、国共内戦へ「逆脱北」する朝鮮族韓国移住というコリアン・ドリーム韓国で差別の対象に中・朝・韓の写し鏡?第5章 満族――「旧支配層」の苦難多き近代史スターリンの基準から外れた民族美少女道士から「戦狼」まで愛新覚羅氏と満族の誇り靺鞨・女真・満洲の歴史八旗には漢人も組み込まれた美人女優の所属旗がゴシップになる太平天国と辛亥革命で進んだジェノサイド自殺を選ぶ旗人人口が2倍以上に激増した満族コラム1 チンギス・ハンは「中華民族」か?―モンゴル族の難しい立場第6章 ナシ族――かわいい文字と極度の観光化日本でも大人気の謎の象形文字三国志の「南蛮」の地中国とチベットの狭間で台頭消えかけたトンパ文字「トンパ焼き魚」登場観光化と知名度向上の背後で第7章 チワン族――「もっとも漢化が進んだ少数民族」メダリストにして愛国的経営者人口最多ながら、存在感が薄い謎の「民族英雄」の短命王朝ウイグル族よりも400年「先輩」漢化と太平天国、文化大革命チワン族企業とウイグル問題コラム2 中国の民族識別工作と「民族にならなかった人々」 第8章 〝客家〟――「東洋のユダヤ人」の虚構と実態中国方言の世界通説「客家特殊論」のあやうさ「血のネットワーク」の実態客家伝説の巨大な虚構客家語は古代漢語の化石?広東人と客家人の「内戦」アルシンドの息子、梅州客家FCでプレーする「TikTok」提供企業の創業者コラム3 華南の方言集団と「福州人」終 章 漢族と〝中華民族〟――世界最大の民族の分断と同質化「民族服」はチャイナドレスか人民服か?漢服ブーム北方人と南方人南方人気質と北京への冷ややかな目線「中華民族」とは何かチンギス・ハンも溥儀も中華民族「単一民族国家」中国への道あとがき 沖縄と日本参考文献