- 2017 06/19
- 私の好きな中公新書3冊
森田洋司『いじめとは何か 教室の問題、社会の問題』
松田美佐『うわさとは何か ネットで変容する「最も古いメディア」』
服部正也『ルワンダ中央銀行総裁日記 増補版』
『いじめとは何か』は、理論とデータをもとに、いじめのメカニズムを分析する。今ではやや古くなった部分もあるが、いじめを個人の内面の問題ではなく、教室内の関係性によって発生するという面に着目し、モデル化している。著者の提唱する「いじめの四層構造論」は、いじめ対策の基礎にもなった。付言しておくと、「いじめの四層構造論」(被害者、加害者、観衆、傍観者)は、「傍観者ではなく仲裁者になろう」といった結論が安易に導かれるものではない。通報者、相談者になること、あるいは四層構造そのものを成立しにくくするなど、様々なアプローチを示唆するものである。
流言研究の一般向け概説書としては、これまで廣井脩『流言とデマの社会学』が不動の地位を占めていたが、『うわさとは何か』は、ウェブ時代の流言も含めて、最近の研究結果をまとめたもの。ウェブ社会になってから、流言研究の実践性はより高いものとなっている。ウェブ社会では「うわさリテラシー」が求められるわけだが、その基礎体力を身に着けられる一冊。
『ルワンダ中央銀行総裁日記 増補版』は、一九六〇年代半ば、ルワンダの中央銀行総裁として派遣された著者のルポ。本書の功績は、ともすれば一般読者(主に文系)が敬遠しがちな金融政策や市場形成の話を、個人の参与観察を通じて見通せること。経済政策が大きな争点となっている今の日本でも重要な意味を持つ。