2016 11/14
私の好きな中公新書3冊

日本とは? 私とは?/橘玲

竹内靖雄『経済倫理学のすすめ 「感情」から「勘定」へ』
下條信輔『サブリミナル・マインド 潜在的人間観のゆくえ』
山岸俊男『安心社会から信頼社会へ 日本型システムの行方』

『経済倫理学のすすめ』は、副題に「「感情」から「勘定」へ」とあるように、旧来の情緒的な道徳を排して経済合理的な倫理を説いた記念碑的作品。日本における新自由主義(ネオリベラリズム)は本書から始まった。

『サブリミナル・マインド』は、脳科学研究者がさまざまな実験を紹介しつつ無意識(認知過程の潜在性)の影響力について語る。古典的な「意識の主体」としての硬質な"私"が融解し、正体不明のぶよぶよとした"わたし"が現われる衝撃の一冊。

『安心社会から信頼社会へ』は、日本の社会心理学の第一人者が、閉鎖的なムラの「安心社会」日本と、開放的な都市の「信頼社会」アメリカを対比しつつ、ステレオタイプな「日本人」像を解体していく。「日本人はアメリカ人より「個人主義」的」との指摘から拙著『(日本人)』(幻冬舎文庫)が生まれた。

橘玲(たちばな・あきら)

1959年生まれ。作家。小説『マネーロンダリング』『タッスクヘイブン』(ともに幻冬舎文庫)のほか、ノンフィクションや時評も手がける。著書は『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』(幻冬舎)、『バカが多いのには理由がある』(集英社)、『「読まなくてもいい本」の読書案内』(筑摩書房)、『言ってはいけない』(新潮新書)など多数。