

中井遼 著
民族や国民をめぐる心の働きを強め、再生産するナショナリズム。帰属意識、愛国心、排外意識の三つの顔をもつ。世界で猛威をふるう排外主義・右派躍進の正体とされるが、なぜ同胞愛は憎悪に変わるのか。なぜ民族紛争は再燃するのか。経済不安との関係とは。本書は国民国家誕生からの歴史を一望し、豊富な事例をふまえナショナリズムがいつ生まれ、社会に浸透し、私達の心を動かすかの全容を描く。俗説を覆し、本質に迫る。【目次】まえがき第1章 ナショナリズムとは何か 議論の概観1 出現 ネーションはいつからあるのか 近代の社会現象 多様化し日常化するナショナリズム2 定義言葉の由来 「生まれ」 ①政治の意識として ②政治運動のイデオロギーとして 日常的なナショナリズム 3 源泉①近代主義 ②民族象徴主義 ③政治や権力闘争 4 分類「良いナショナリズム」と「悪いナショナリズム」? ナショナリズムとパトリオティズム 5 まとめ――プラスでもマイナスでもなく第2章 ナショナリズムを構成しているもの1 三つの意識2 三つの意識の背景社会学/政治学/心理学 着目点の違い 諸意識の実態 世界各国の実態 意識は時間とともに変わる 3 意識間の相互連関愛国心と排外意識はいつ結びつくの? 個人的差異より社会的文脈が重要? グローバル化の効果? 国のメンバーシップの性格? 4 まとめ――ナショナリズムの多次元性第3章 何が帰属意識を強めるのか1 ネーションへの帰属意識地域主義との関係 複数のアイデンティティ2 近代化と帰属意識の高まり学校教育、鉄道 出版・印刷の普及 軍隊 3 現代文化と帰属意識スポーツの祭典 FIFAワールドカップ アフリカのサッカー選手権 ラグビーワールドカップ4 帰属意識を高める政治5 まとめ第4章 何が愛国心とプライドを強めるのか1 愛国心の多義性・多様性愛国心をどう捉えているか 愛国心の国際比較 2 経済格差との関係格差と貧困 政府の陽動 3 政治的動員・選挙との関係選挙と動員4 国際環境の影響グローバル化の影響 国際紛争と脅威 5 文化表象としての音楽イベント音楽の力 国歌と祭典 6 まとめ第5章 何が排外意識と優越感情を強めるのか1 経済不安よりは向社会性?経済的な脅威 集団的な脅威 外国人比率の効果 2 政治状況と排外主義ホモナショナリズム/フェモナショナリズム3 隠れた反移民感情文脈によって異なる「望ましい回答」4 国際政治の影響外交的緊張5 まとめ第6章 政治・経済への効果1 公共財の分配福祉への効果 多民族国家は不利なのか 2 シンボル操作の効果国土・国旗という象徴と寄付 党派的分断を癒す 3 民主的な規範と政治信頼民主主義を促すか 社会的な信頼と負担4 経済や資源の開発資源ナショナリズム エコ・ナショナリズム/グリーン・ナショナリズム5 まとめ――ナショナリズムの政治経済的効用?第7章 暴力・紛争への効果1 ナショナリズムと内戦貧困と格差 政治的排除の回避 連邦制や選挙制度への効果2 ナショナリズムと少数派の弾圧暴力と流血が生まれる理由 東欧でのホロコースト 3 ナショナリズムと国家間戦争国民国家と戦争の波 失地回復運動 言説枠組みの影響4 ファシズムとセクシュアリティ5 まとめ――ナショナリズムと暴力終 章 ナショナリズムの実態を見る1 何がわかっていて、何がこれからわかるのか2 政治をめぐる意識の一つとして3 おわりにあとがき注記一覧 / 参考文献・出典