月村了衛 著
差別も貧困も、なくならないのか?今なお続く「在留外国人問題」に切り込む、慟哭必至の社会派巨編在日朝鮮人帰還事業――1959年に始まったそれは、人類史上最悪の「大量殺戮」への序章だった。二人の若者がそれぞれ経験した「地獄」を描き、現代に通ずる差別の源流と、政治家・マスコミらが犯した大罪に迫る。なんやおまえ、チョーセンやないけ――。1959年大阪。在日朝鮮人への差別がはびこる街で、復興を遂げ平等を実現し「地上の楽園」と称される北朝鮮への「帰国運動」が過熱していた。学問の道を志す高校生の孔仁学は、ヤクザの抗争に巻きこまれ窮地に立つ親友・玄勇太に「帰国」を勧める。家族とともに北朝鮮へ行くことを決めた勇太だったが、帰国船内の食事の貧弱さや寝床の汚さに、「楽園」への違和感を覚え始め……。