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江上照彦 著
ナポレオンはメッテルニヒを「世紀最大の嘘つき」と呼んだ。一度はその愛人だったこともあるリーフェン公爵夫人さえも、「世にも稀れな偽善者」とののしった。田沼意次の場合も嫌われかたがよく似ている。徳川の為政者中、彼ほど世間から口汚く罵倒され、あげくは汚辱の淵に蹴落されて深く沈淪しているものはない。東西をとわず悪名高い為政者には共通の政治的性格の特徴があるが、不評の条件とは何か。意次の生涯をたどって追究する。