小林登志子 著
アッシリアは、イスラエルの民を虜囚にし、敵対民族を残酷に処刑したとして、『旧約聖書』では悪役に描かれる。だがその実像はバビロニアの先進文明に学び、長きにわたって栄えた個性的な国だ。紀元前2000年に誕生した小さな都市国家が他国に隷従しつつも、シャルマネセル3世、サルゴン2世らの治世に勢力を拡大、世界帝国となるが、急速に衰微し、前609年に瓦解する。その盛衰を軍事・宗教・交易など多角的に描く。------目次------はじめに序章 アッシリア学事始め――帝国による、帝国での、帝国の発掘 1 忘れ去られなかったアッシリア 2 アッシリア遺跡の発掘 3 「女王」たちの貢献第1章 「アッシリアの三角」と「ハブル三角」――アッシリアの風土 1 メソポタミア文明はシュメルから始まる 2 メソポタミア南部に先行した、北部の村落文化 3 アッシリアとは 4 両河の間の肥沃な土地を結んだアッシリア 5 アッシリアが侵攻した、あるいはされた周辺諸勢力第2章 アナトリアへおもむいたアッシュル商人――古アッシリア時代Ⅰ 1 エブラ市から出てきたアッシュル市の情報 2 「キュル・テペ文書」が伝えるアッシュル商人第3章 シャムシ・アダド1世無双――古アッシリア時代Ⅱ 1 シュメル・アッカドの属国だったアッシュル市 2 情報操作された『アッシリア王名表』 3 王権簒奪者シャムシ・アダド1世 4 シャムシ・アダド1世没後の情勢変化第4章 属国にされたアッシリア王国――中アッシリア時代Ⅰ 1 前2000年紀後半の古代オリエント世界 2 アッシリア王国を属国にしたミタンニ王国 3 「アマルナ文書」が語る時代 4 前14世紀前半までのアッシリア王国第5章 領域国家アッシリア王国への転換――中アッシリア時代Ⅱ 1 国際外交に参入したアッシュル・ウバリト1世 2 叙事詩に謳われたトゥクルティ・ニヌルタ1世 3 版図拡大から縮小に転じたティグラト・ピレセル1世治世 4 アッシリア法に見られる社会第6章 アッシュル・ナツィルパル2世カルフ市に都す――新アッシリア時代Ⅰ 先帝国期 1 鉄器時代に入る 2 アラム人の拡大 3 残酷なだけか、アッシュル・ナツィルパル2世 4 連年の軍事遠征を記録したシャルマネセル3世第7章 強制移住政策を推進したティグラト・ピレセル3世――新アッシリア時代Ⅱ 帝国期 1 バビロニア王も兼ねたティグラト・ピレセル3世 2 帝国の構成 3 アッシリア軍とは 4 天性の軍人にして、有能な行政官サルゴン2世第8章 センナケリブ、エサルハドンおよびアッシュル・バニパル3代――新アッシリア時代Ⅲ 絶頂期 1 悪名高きセンナケリブ王 2 エサルハドン王、最大版図を達成す 3 親征しなかったアッシュル・バニパル王 4 「学者王」アッシュル・バニパル終章 アッシリア帝国の滅亡とその後 1 アッシリア帝国の滅亡 2 アッシリア帝国を滅ぼした新バビロニア王国 3 記録を残さなかったメディア王国 4 世界帝国の後継者ペルシアあとがき主要参考文献図版引用文献一覧アッシリア史略年表索引