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 『葬儀写真集』に『職務質問入門書』など、まさに珍書中の珍書を100冊集めた『ベスト珍書』。おかげさまで本好きの人を中心に、販売絶好調。

 そのヒットの一因として、著者であり、自らが編集者でもあるハマザキカクさんの強烈なキャラクターがあるでしょう。彼は社会評論社というガチガチの社会派出版社に勤めながら、「珍書プロデューサー」として世にない本を生むため、 書店や図書館をはしごし、国会図書館に通いつめ、刊行数が年に8万を 超えるとも言われる新刊、その全てをチェックしているのです。

 そしてその装いは編集者のイメージとしては似ても似つかない『デスメタル』。音楽を愛し、珍書を愛す(しかも帰国子女)。そういった変わった経歴・嗜好がヒットを生んだと言っても過言ではないかもしれません。

 そこで今回は、ハマザキカクさん含む数名の編集者を集め、座談会を開催させて頂きました。出版不況のなかで編集者たちはどんな現実と向き合い、日々もがいているのか。そして『ベスト珍書』にまつわる話題など、ここだけの裏話を二回にわたってお伝えします。

 さあ、編集者の叫びを聞け!

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登壇者:ハ(ハマザキカク)、T(女、『ベスト珍書』前担当者)、K(男)、Y(男、『ベスト珍書』現担当者) *全員30代

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ハ「Kさんとはいつぶりでしたっけ? 神保町で飲んで以来?」

K「そうそう、1年以上前。懐かしいなあ」

ハ「でもあれ以来、実は飲み会に行ってないんです。今年アルコール一滴も飲んでないんですよ。この本の執筆に集中したかったこともあって」

K「本当にまじめなんだよなあ。見た目に比べて(笑)」

T「私がハマザキさんと初めてお会いしたのも、とある飲み会でした。編集者の交流はやはり飲み会の場が多くなりますね」

ハ「ああ、あれはなかなか思い出深い会でしたね。編集者とか出版関係者ばかりだったんだけど、あつまった人が全員初対面。しかも発起人が酔っぱらって最初 に帰ってしまって、場がざわついてしまい(笑)。さらに言えばボケ・ツッコミの人数のバランスも微妙だった」

K「集ったメンバーの名前を聞くと絶対行きたくなる会ですけど・・・。やっぱりそういうこと、人と人だから、どうしてもありますよねえ」

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T「しかしベスト珍書が初めてですよ。『はじめに』と『終わりに』の二箇所に私の名前を掲載頂いたのは!」

Y「『終わりに』のほうは一度私が削ったんですが、ハマザキさんから『やはり残したい』と」

ハ「自分としては感謝の意味を込めていたのだけど。それは編集者としては自分の存在を押し出してはいけないとか、押し殺すとか、そういうスタンスが関係して?」

一同「笑」

Y「あまり深い意味はなく、単純に重複だからです! そう言えば『ベスト珍書』ではDTPのオペレーターさんにまで謝辞を述べられていて、HONZの成毛さんも驚かれていらっしゃいましたね。それもハマザキさんが編集者だからこそのエピソードですが」

ハ「今回かなり例外的な進行方法をさせていただいたので、やはり感謝しなきゃって」

Y「でもご担当されたオペレーターさんが女性で、ゲロとかうんちの本をレイアウトすることにメンタル的にまいってましたから確かに少しくらい感謝いただいても良いのかも(笑)」

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集まったのはハマザキさんと同じ30代の編集者。 しかし危なっかしい話ばかりになったため、ほとんどこの場には書いていません・・・。

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K「社会評論社の社長さんはどのような反応ですか?」

ハ「喜んでます。『中公新書クラレで出たぞー』って。『クラレじゃないですよ』と指摘すると、その度に新パターンで言い始めます。『あーそうか。クレラかー』、『いや違います』、『あーレクラだったな』みたいな具合」

*注意:正ラクレ

Y「コラムで書いていただいた本の集め方だったり、情報収集術的な話題がメディア関係者で特に評判が良いですよね。先ほど取材いただいたメディアの方も、そこにかなり食いついていらっしゃいました。特に国会図書館ではどこに座るべきかとかはオオウケ(笑)」

ハ「 一番効率の良い席は貸し出しブースと向かい合った列の一番端っこの端末がある席だね。さらにテクニック的なことを言うと、国会図書館の予約システムはfirefoxを使っているので、まずタブを40個ぐらい複製。それぞれにリクエストしたい本の書名を予め入力しておくのがポイント。

 そしてリクエストしていた本が「到着」とディスプレイに表示されたらそれを受け取りに行った足で同時に一冊返却! そして席に戻った瞬間、次の本をリクエスト! そうすれば間を開ける事なく、常に3冊キープできる仕組み。でも「一次離席」ボタンを押さないで離れちゃうと、タグが全部消えちゃうので、そこは要注意」

T「・・・サイトの読者さんどれくらいの方、お分かりになるかしら(笑)。一冊一冊、ちゃんと読んでらっしゃるんですか?」

ハ「国会図書館ではひとまず目星を付けていた本が珍書かどうか見極めるのが目的なので、そこでは熟読はしないですね。カバーとか、『はじめに』『あとがき』、そして目次や気になる章を読んで、「これは違うなー」と思ったら、すぐ左の返却口へ持っていっちゃいます。そして端末に戻るや否や、すぐにリクエスト。貸し出し口と返却口、そして端末を一日中、ぐるぐるまわっている感じでしょうか」

一同「爆笑」

Y「私、この本に携わってはじめて国会図書館の"別室"に足を踏み入れましたよ」

ハ「ベスト珍書にも書いたけど、あそこに行くときは『今日は一日別室』と決めておくのもポイント。あそこ二階だし、出入りするだけでかなりのタイムロスが出ちゃう。しかも、えぐい本とかがある割に、結構な頻度で受付担当が女性だったりしません?」

Y「そうなんです! 特に最初の一冊は借りるの恥ずかしかったですよ。特に女性器だけの本とか・・・。でもこんなに国会図書館が面白いところだって、みんなもっと知ってもらって良いと思うのですよね。一日いても全然飽きない」

ハ「反響を見ていると、国会図書館を限界まで楽しむ方法とか、国会図書館マニュアルとか、そういった本を書いても面白いかもしれませんねえ」

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ハ「しかし『ベスト珍書』、自著ながらこれまで100回以上読みました。朝読んで、寝る前にも読んで。我ながら面白い(笑)」

K「何か新しい発見ありました?」

ハ「こんなこと書いたんだなとか。ただそれ以上にすでに、アレを入れたかったとか、これは入れなくてよかったなとか。パート2出したいなあ」

Y「まずは重版してから、ですかねえ」

ハ「結構売れているように感じてはいるんだけど。さては本当は重版が決まっているのに、著者にだけ秘密にしている・・・そのパターンでしょ?」

一同「爆笑」 

K「新しい!編集者ならではのツッコミ!」

T「普通は著者さんに急いで伝えますよ。それしか無いじゃないですか、刊行後に著者さんへ報える事って」

ハ「自分の場合、ぬか喜びになってしまうと悪いし、安心しきっちゃって宣伝しなくなるのも困るので、重版の連絡は慎重に扱っていますね。しかしこれから結構な量、メディアに取り上げられるから、早くしないと手遅れになると思いますよ~」

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☆第二回に続く!

以上、ラクレ編集部 吉岡宏

『ベスト珍書』著者、ハマザキカク。本名、濱崎誉史朗(はまざき・よしろう)。フィリピン、チュニジア、 イギリスなどで育つ。現在、社会評論社に編集者として勤務。 執筆以外の組版からカバーデザイン、校閲など本作りに関わるプロセス 全てを一人で行っている。変わった企画を次々に生み出し、各地の書店で、 『Cool Ja本』や『松マルクス本舗』など自身がプロデュースした 本のフェアが開催されるなど「珍書プロデューサー」として世に知られる。 随時、Twitterで珍書速報を流しており、『本の雑誌』にて 「新刊めったくたガイド」を担当。主な担当書籍に『世界飛び地大全』 『いんちきおもちゃ大図鑑』『完全自殺マニア』『エロ語呂世界史年号』 『ニセドイツ1・2・3』など。