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人形町・芳味亭で「洋食弁当」

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人形町は都内にいくつかある洋食の聖地の一つだ。個人的にはほとんどこの街を訪れたことがなかったのだけれど、いい店がいくつもあるようなので、今後研究を推し進めていきたい。地下鉄 「人形町駅」で降りれば、多くの洋食屋がわりと近い。。しかし、個人的には錦糸町で用事が多いので、JR総武線に乗って隣の「馬喰町駅」で降りてそこからテクテクと歩くのだった。まあ10分くらいでしょうか。東京は駅と路線が違っても、結構目的地に近いことがままあるよね。

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というとで、今回訪れたのは芳味亭(ほうみてい)。ここは1933(昭和8)年創業で、初代はなんと横浜ニューグランドホテルのシェフだったそうだ。つまり「ホテル発祥」系洋食なのだった。

お店は通りから少し中に入ったところにある。すき焼きの今半もそばにあるんだねと思いつつ店をめざすと、実にカッコいい和風建築。「それでは!」と深呼吸をして引き戸をあけると、一階は客で一杯だった。店の人が「お二階へどうぞ」と。よしよしお座敷で食べることができるぞ! と、いそいそと靴を脱ぐ。靴をしまおうと思ったが、どうやらお店の人が管理してくれるようなので、店の人の後ろについて、そのまま階段をとんとんとんと上がる。

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こちらです」と座敷に案内される。先客は二組で、手前の四人がけの机に座っていいようだ。座布団を敷いて座り、向こうには床の間が見える。こりゃいいや! 店の人がメニュー、水、お絞りをもってきてくれたが、実は今日ここで食べたいものは決まっている。それは「洋食弁当」なんですね。1550円と私的にはご馳走値段だが、いってみようと注文。洋食って、もともと西洋のものを日本人が明治時代に導入してアレンジしてこしらえたものだけど、まさに洋食を「弁当」に入れるところなど、日本的アレンジの真骨頂でしょう。この洋食弁当は創業時からあるとのことで、当時周辺は花街で、芸者集をつれた旦那などが食べにきていたらしい。

そんなことを思い出しつつ、水を飲んで待っているといよいよ弁当が登場! ......これは素晴らしい。小さめのおかずが所狭しと並んでいる。芸者さんたちが小さい口で食べたんだろうなということが想像できるよ。上野の老舗とんかつ屋の井泉のカツサンドも、芸者さんたちが口の周りを汚さずに、口紅を落とさずに食べられるようにと考案されたと聞いたことがあるけど、芸者さんは、パワフルな食べ物が実は好きだったんだね。

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ということで、どれから食べようかなと思ったが、二つあるハンバーグから食べよう。意外と肉々しいハンバーグ。そしてスンバらしいドミグラスソース。やや甘みが勝っているが、深みと爽やかさを感じる実力のあるソースだ。これはすごい。続けてコロッケに。ホワイトソースとろり系、衣さっくり系のステキさ。中に細かい肉が入っていて、これはまさにクラシックスタイルのコロッケだよ。このコロッケは伝統店でしか食べられないよ。

それにしても、おかずを受け止めるご飯もふっくら炊けてあって実においしい。いやあ、シアワセだなあ。そしてサラダとおかずを分ける境界として、大きなローストポークも入っている。これは肉の歯ごたえが頼もしいなあ。

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さて、ここいらでサラダも食べよう。キュウリ、トマト、レタス、そしてポテトサラダが入っている! ポテサラは薄切りのジャガイモがやや原形を残していて食べ応えがある。そしていよいよエビフライも食べよう。食べると衣はカリッ、エビはプリッで何も言うことはないほどの満足。かくしてレタスも食べ、キュウリも食べてご飯を大体食べてしまう。一番最後に何をやったかというと、残っていたローストポークで、ドミグラスソースを愛おしく掬(すく)って食べたのであった。

......ああ、今日はいい一日だよ。ああ、いつの日か、洋食弁当(上)2400円、そして三重弁当2950円も食べてみたいものです。

1967年愛媛県生まれ。横浜国大卒。定食評論家として首都圏をはじめ全国の定食・立ちそば等を食べ歩く。主著に『定食バンザイ』『定食ニッポン』『たらふくホルモン』『立ちそば大全』『丼大好き』『かながわ定食紀行』『定食と古本ゴールド』『とことん! とんかつ道』『お魚バンザイ』など多数。

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