なぜタイ人はこんなに日本の焼肉が好きなのか
タイ人が特に好きな食べ物、それはやっぱりお肉。特に日本の焼肉はタイ人に大人気です。
日本で焼肉を食べたい理由、その一つ目は、何と言っても牛肉のクオリティが高いこと。タイにももちろん牛はたくさんいるのですが、おいしい牛肉を食べようとすれば、たいてい高いし、そもそもあまり美味しくない。しかし日本の場合、どこでお肉を食べても、かなりクオリティが高いし、タイよりずっと安い。しかも、不思議なことにそれが国産でも海外産でも、日本で食べるとおいしいのです。
あくまで私の考えですが、それはきっと、牛肉そのものの品質はもとより、処理技術の高さが関係しているのではないでしょうか? タイではそのレベルがまちまちなので、料理をする際にスパイスを多く使って、元の味がわからないくらいまで味付けをします。実際、日本に来て牛肉を食べて、初めてその純粋な味を知った、なんていうタイ人は少なくありません。
そこで、今回はタイ人である自分が来日して、その美味しさに感動した焼肉店を2店紹介しましょう。いずれのお店もいまやタイ人が殺到する名店です。
最高級牛肉と外国人ウケ抜群の店長、それが「炭火焼肉 なかはら」!
まずなんといっても最初に名前を挙げたいのは「炭火焼肉 なかはら」。もともと三ノ輪にあった人気店、「炭火焼肉七輪」が移転して、市ヶ谷にお店を構えています。
店長である中原さんのオリジナル、30ヶ月育てた但馬牛をはじめとしたトップクラスのもの、その牛のあらゆる部位の美味しいところを堪能させてもらえます。それにくらべてタイで食べる部位などはそもそも限定されている、ということもあるので、これも人気の理由の一つでしょう。
そして何と言っても牛を切り分ける、中原さんの職人技がすごい。牛のことを知り尽くして、部位ごとに最適な食感、風味、味を最大限に引き出す切り方をする。そんなこだわりを持つタイの料理人は聞いたこと無いし、おそらく日本でも切り方において右に出る職人はいないんじゃないでしょうか。
しかもそんな最高級牛肉と職人技であるにも関わらず、価格は大変に良心的。一般的な物価はタイより日本の方が高いのですが、それでもタイ人でも通いやすい価格設定は本当に素晴らしい。
そして最後に、その人気を支えるのは中原さん自身のキャラクターです。実は中原さん、アメリカ生まれで英語が堪能。そのため、タイ人を含む外国人観光客の多くとスムーズにコミュニケーションをされます。美味しいお肉に中原さんの明るく元気な性格が相まって、「炭火焼肉 なかはら」がタイ人に大人気なのは当然かもしれません。
中原さんが切り分けてくれたお肉を食べられるだけで訪問の価値アリ
炭火焼肉 なかはら
東京都千代田区 六番町4-3 GEMS市ヶ谷9F
03-6261-2987
アレンジ肉料理と焼肉で四季を感じさせる名店! 「よろにく」
続いて焼肉でランクインするのは「よろにく」。某口コミサイトの焼肉ジャンルで全国1位に輝くなど、日本でも有名人御用達、予約の取れないお店として有名で、おいしいものにうるさいタイ人ならば必ず行きたがる名店です。
このお店で特に大人気なのが、DJ出身であるオーナーのバンさんが考えるアレンジ肉料理。こちらもタイでは絶対に食べれないような牛の部位を、さらに食べたことのないような、繊細な味付けで楽しませてくれます。また焼肉ではあまりイメージのない旬の食材をたくさん使用し、日本の四季を感じさせてくれるのが、熱帯雨林気候で夏ばかりのタイ人には、とてもうれしい演出。
また、一つ一つのお肉に合った焼く時間を考えて、バンさん自らが絶妙な加減で調理をしてくれます。焼肉は好きだけれども、その食べ方に慣れていないタイ人にはこれは非常にありがたい。そして人気の理由として、絶品メニュー、シルクロースがあります。部位は程よくサシの入ったザブトン。これを数秒炙ってタレと生卵にくぐらせ、トリュフをまぶす。口に入れた瞬間に溶けてなくなってしまう、そのおいしさはタイ人でなくとも虜になってしまうことでしょう。
人気の理由はまだまだ。たとえば名物になんと、かき氷があります。
氷に目がないタイ人ですが、タイのかき氷は基本的にカチワリ氷のようなゴリゴリしたもの。日本独特で、さらによろにく独特の、とてもやわらかい食感のかき氷を一口食べると誰もが「これが氷!?」とかならず驚きます。しかも味も、ほうじ茶や練乳など、やはり繊細なものが多いので、焼肉を食べた後にぴったり。
また、東京らしいオシャレな店内でゆったりできる雰囲気に、行き届いたサービス。極めつけに美男・美女揃いの店員さんも人気の理由だと思います。
東京都港区南青山6丁目6−22 ルナロッサ南青山 B1
03-3498-4629
以上のことから、私が選んだ焼肉店はこの2店。いずれもおいしいお肉を食させてくれるのは当然のこと、日本らしいこだわりと、タイでは絶対に味わえない演出が加わっているのが特徴です。人気の理由も当然の、まさに「外国人にとっての名店」といえるのではないでしょうか。
次回は、こちらもタイ人大好きの"お寿司"、その人気店をご紹介したいと思います。
著者 ピーラゲート チャロンパーニッチ
タイ・バンコク生まれ、日本在住。現在旅行口コミ会社にてマーケティングを担当。国王ラーマ6世が設立したVajiravudh Collegeを卒業後、2001年にAssumption University(日本でいう外語大学)に入学。日本への関心から、奨学金を得て、2006年にアジア太平洋立命館大学アジア太平洋学部入学。2010年に同大学を卒業後、輸出入業を経て、現在勤務しながら、フリーランスで通訳・翻訳業を行い、大手企業の会議通訳なども担当。タイ王国タクシン前首相のご家族がプライベートで来日した際、アテンドをしたこともあり、今では政治家や経営者、芸能人などが来日した際アテンドをしている。また、タイ大手テレビ局「チャンネル3」で東日本大震災直後やその後を取材したり、「アイアンシェフ(料理の鉄人)」や「フードワークス」の現地コーディネーターとして、タイの番組製作にも関わっている。メールアドレスは peragate@gmail.com